「何もしない」を職業にした35歳男の豊かな人生 「レンタルなんもしない人」が親しまれる理由
1年前のこの日、“レンタルなんもしない人”は、ひとつのツイートから誕生する。
「『レンタルなんもしない人』というサービスを始めます。1人で入りにくい店、ゲームの人数あわせ、花見の場所とりなど、ただ1人分の人間の存在だけが必要なシーンでご利用ください。国分寺駅からの交通費と飲食代だけ(かかれば)もらいます。ごく簡単なうけこたえ以外なんもできかねます」(原文ママ、レンタルさんのツイートより引用)
ツイートはすぐに話題になり、その存在が世に知られるのに、そう時間はかからなかった。2019年に入って書籍を2冊発売。漫画化やバラエティー番組の出演、NHKのドキュメンタリーで密着取材を受けるなど、その斬新な生き方には各メディアから注目が集まっている。
1年間でここまで有名になったことについて、レンタルさんは「1年前では考えられなかったことが毎日起こっていて、夢のようです」と素直に喜びを表した。
仕事内容は「ただそばにいるだけ」
そもそも“なんもしないサービス”とは、具体的にどんなサービスなのか。著書『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)からは業務が垣間見える。
「結婚式を眺めにきてほしいという依頼。事情により友達呼ぶの控えてたけど少しは誰かに見てもらいたい欲が出てきたとのこと」
「離婚届の提出に同行してほしいという依頼。一人だと寂しさがあるのと、少し変な記憶にしたいという思いもあるとのこと。『最後に、お疲れ様でした(旧姓)さんと言ってもらえますか』と頼まれその通りにした」
「自分に関わる裁判の傍聴席に座って欲しい」との依頼。民事裁判で、依頼者は被告側。初裁判の心細さというより、終わって一息つく時の話し相手が欲しいとの思いで依頼に至ったらしい」
「『引っ越しを見送ってほしい』との依頼。友達だとしんみりし過ぎてしまうため頼んだとのこと。元の部屋~東京駅だけの付き合いだったけど、いろいろ楽しい会話もあり、演技のない名残惜しさで見送れた」
「気の進まない婚活の作業を見守ってほしいとの依頼。唸り声を10分に一回くらいあげながら登録作業に勤しんでいた」
著書『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)より一部抜粋
なんもしなくていい。家族でも友人でも恋人でもない、自分のことをまったく知らない誰かに、ただそばにいてほしい。
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