日韓関係悪化が影落とすJR「新型高速船」の針路 博多―釜山「クイーンビートル」来夏就航
オリンピックイヤーの夏、真っ赤な「カブトムシ」が大海原に乗り出す。
JR九州グループで、日本と韓国を結ぶ高速船「ビートル」を運航するJR九州高速船は7月29日、新型船「QUEEN BEETLE(クイーンビートル)」を来年7月15日から博多―釜山航路に就航させると発表した。
クイーンビートルは、3つの胴体で構成され、安定性が高いという「トリマラン(三胴船)」。デザインは豪華クルーズ列車「ななつ星 in 九州」をはじめ、JR九州の車両の多くを手がけた水戸岡鋭治氏が担当する。
「トリマランは非常に安定した船で、玄界灘を渡るにふさわしい。広い船内を歩き回っての買い物やレストランでの食事など、船旅を楽しめるのではないかと非常に期待している」。JR九州の青柳俊彦社長は記者会見で、荒れやすい海として知られる玄界灘でも快適に航行ができるという新型船への想いを述べた。
一方で、日韓対立の深刻化は民間交流にも深い影を落とす。新型船は玄界灘と日韓関係悪化という荒波に立ち向かうことになる。
「船旅そのものを目的に」
JR九州が高速船ビートルの運航を始めたのは1990年。当初は博多―長崎オランダ村間に、翌1991年にはJRグループ初の国際航路として博多―釜山間に就航した。現在は同社から船舶部門を分社化したJR九州高速船が3隻のジェットフォイル(水中翼船)で博多―釜山間、対馬―釜山間を運航しており、クイーンビートルはこのうち1隻を置き換える。
ジェットフォイルは博多―釜山間を3時間5分で結ぶが、クイーンビートルは3時間40分の予定。新型船を若干速度の落ちるトリマランとしたのは、日韓間でシェアを伸ばすLCC(格安航空)への対応がある。JR九州高速船の水野正幸社長は「(LCCとは)違う土俵で、スピードだけでなく船旅そのものが目的となるような快適性を提供し、サービスの競争に持ち込みたい」と語る。JR九州の観光列車とも共通する考え方だ。
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