レクサスはこの30年でどれだけ洗練されたのか 初代LS、最新のRXに乗って見えたこと
これが達成されたのが89年の初代レクサスLSである。日本ではトヨタ・セルシオの名で発売された。
私は1989年1月にデトロイトで開催された北米自動車ショーを訪れて、さまざまな自動車メーカーの幹部がレクサスのブースを偵察にやってきたのをこの目で見た。
ドイツのメーカーは(いかにも頭の固いドイツのメーカーらしく)思いつきで作った大型セダンという感想を隠さなかった。しかし実際は、静かで快適でつくりがよいレクサスは、みるみるうちに米国の市場で確固たる地歩を築いたのだった。
話は逸れてしまうけれど、営業畑のひとには興味あるかもしれない話題をひとつ披露しよう。米国でレクサスが受け入れられたのは、もちろんクルマがよかったからだが、ブランドの浸透のために、販売担当者は懸命の努力をした。
今乗ってもよく出来ている初期モデル
私がおぼえているのは、富裕層が住んでいれば小さな町でも、休日のスワップミートやポロなどの競技のスポンサーをまめに務めていたことだ。会場には黒地に白でロゴマークを染め抜いたレクサスのバナーが掲げられ、地元のひとの共感を得るようになっていたのである。
今回、試乗会の舞台は、細長く海へ突き出たパパガヨ半島というリゾートに建つフォーシーズンズリゾート・コスタリカだった。両側が砂浜というぜいたくな立地で、終始、波が打ち寄せる音が部屋に響く風情ある環境だ。
そこで、ほんとうに久しぶりに初代LS(1989年)、初代SC(1991年)、初代RX(1998年)といったモデルに接することが出来た。LSはモデルチェンジを繰り返していまは5代目、SCは2017年にLCとなり、RXは現在4代目が店頭に並ぶ。
昔のモデルに乗ってみると、驚くほど出来がいいのだ。レクサスインターナショナルで車両開発を総指揮するエグゼクティブバイスプレジデントの佐藤恒治氏も現地に来ていて、話をするなかでレクサス車の価値は「圧倒的静粛性、乗り心地、作りのよさ」が核にあると語っていたが、それが最初からかなり高いレベルで実現されているのに、改めて感心してしまった。
いまは新車で買えないモデルのことをあまりホメても、読むひともフラストレーションがたまりそうなので短くしておくけれど、広びろとした室内、速度が上がっても静粛性が保たれる室内、ボディパネルの合わせの隙間の細さなど、当初からレクサスは気合いが入っていた。