日産、販売現場から上がる悲鳴 ゴーン体制初の営業赤字

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日産・ゴーン体制初の営業赤字、販売現場から上がる悲鳴

「誠に残念ながら2010年卒業予定者採用における文系および文理共通職種の募集を実施しないことと致しました。随時、退会手続きをとらさせていただきます。日産自動車人事部」

2009年2月10日、日産自動車の新規採用ページにエントリーしていた学生たちは一通の緊急メールを受信した。前日に日産は、2009年3月期10~12月決算を発表し、通期1800億円の営業赤字転落と世界で2万人の大幅人員削減を打ち出したばかりだった。

学生の間では就職活動サイトの定番「リクナビ2010」に日産が掲載を見合わせたことで、新卒全面中止のうわさがかねて流れていた。「技術職を中心に数十人の単位で新規採用は行う」(日産)というが、就職活動が本格化し始めた後での方針転換に、日産の緊迫感が表れている。

カルロス・ゴーン社長にとっては1999年に経営参画して以来初めての営業赤字となる。会見では「金融危機、景気悪化、円高。全社とも同じ三重苦を抱えている。ルノーとの提携の機能不全でも、経営ミスでもない」と外部要因による赤字転落を強調。しかし、販売現場からは不満の声が上がる。

販売現場は資金繰りに汲々

ある独立系日産ディーラーの社長は「12月は本当に緊張した」と明かす。日産への車両仕入れ代金の支払いサイトは3カ月。3カ月前の9月は販売減も今ほど深刻ではなく、仕入れは多めだった。一方の12月は歴史的に売り上げが減少。このため、手元資金が急速に細ったのだ。この社長は「売れるものは全部売った。全店で400台近くあった試乗車は半分近く減らし、販売用中古車はオークションでたたき売って現金を確保した」と振り返る。「日産はトヨタ自動車と違って資金融資も債務保証もしない。12月はほとんどの独立系日産ディーラーが資金繰りに苦しんだはずだ」(同)。年明け以降も販売不振は続き、このディーラーも足元の売り上げは4割減と、まったく油断はできない。「頼めば支払いサイトを延ばしてもらえるだろうが、来月が今月よりも売れると思えない状況でジャンプさせても……。自分たちで銀行と掛け合うしかない」とあきらめ顔だ。

別の独立系日産ディーラー幹部は「今の日産には売れる車がない。去年モデルチェンジした新型キューブ以降、魅力的な車が出てこない」と指摘する。

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