神戸市がブチ上げた「タワマン禁止令」の波紋 行き過ぎた都心回帰に「待った」がかかった

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こうしてタワマン排除に動き出した神戸市。だが、条例が施行されても、新規のマンション開発が一掃されるわけではなさそうだ。

中心市街地でのタワーマンション建設を封じる条例は、横浜市が先駆けて2006年に制定している。横浜駅および関内駅周辺でのマンション建設を禁止し、それより外側の一定地域では住宅部分の容積率の上限を300%に設定。神戸市よりさらに厳しい。

それでも、2015年には東急不動産が「ブランズ横濱馬車道レジデンシャル」を開発した。14階建てだが、低層部をホテルにすることで住宅部分の容積率を抑えた形だ。

神戸市においても、規制のかからない敷地面積が1000平方メートル未満のマンションを中心に、積極的な開発は続くと見られる。むしろ業界からは、「タワマンが今後建てられないとなれば、既存物件の希少価値が上がるだろう」という声もある。

企業誘致にも高い壁

条例のもう1つの目的である、オフィスや商業施設の集積促進はどうか。神戸市の条例では、400%という容積率の制限がかかるのは住宅部分のみ。例えばもともとの容積率が600%の土地であれば、低層階に商業施設を入れたり、一部フロアをホテルに転用したりすれば、残りの容積率200%をうまく使い切ることができる。

横浜市の条例制定時、市担当者は市議会での質問に対し「全部が住宅になるよりは、低層階に店舗や事務所が入ることで、街並みとしての賑わいあるいは景観等が維持される」と答弁している。マンションとオフィス・商業の複合施設を認めた背景には、路面店を増やして人の流れを作る思惑があり、神戸市も同様と見られる。だが、「複合施設は立地が限られる」(関西地盤のデベロッパー)ため、市のもくろみどおりに、にぎわいがもたらされるかは微妙だ。

企業誘致にしても、一筋縄ではいかない。総務省の「経済センサス」によれば、2016年6月時点で神戸市中央区に所在する事業所数は2万1258と、6年前に比べて1241減少した。大阪まで30分という近からず遠からずという立地が災いし、「大阪とは別個に支店を構えるほどのオフィス適地とは言いがたい」(大手デベロッパー幹部)。

今年5月には「丸亀製麺」などの外食チェーンを展開するトリドールホールディングスが、「グループの中枢拠点としての機能およびグループ全体を牽引する役割の強化を図る」ため、本社を神戸から東京・渋谷に移転すると発表した。神戸市もオフィス賃料の補助など支援策を打ち出してはいるが、東京の磁力に打ち勝つのは並大抵ではない。

タワマンを排した街はどんな表情を見せるのか、壮大な社会実験が始まった。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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