10年間車いすの客を待ち続けたバー店主の願い 大分で開業、故忌野清志郎氏に背中を押され
東京2020オリンピック・パラリンピックまであと1年余り。パラリンピックの期間中は過去の大会から推測すると、車いすを使う1800人以上の選手や関係者に加えて、多くの観客が国内外から東京を訪れることが予想されている。
しかし、受け入れには課題がある。とりわけ、東京には車いすで利用できる飲食店が少ない現状を、前回の記事(東京のバリアフリーに足りない「観光客目線」)で指摘した。
バリアフリーは特別なことではなく、誰もが気軽に訪れて楽しめる店づくりを目指すのは、自然なことではないだろうか――そう考えて作られた「完全バリアフリー」のバーが大分県にある。
15年前、独立を機にバリアフリーの店を作り、宣伝もせずに車いすの客を待ち続けた、“知る人ぞ知る”バーを訪れた。
雑居ビルの4階でバリアフリー?
JR大分駅から10分ほど歩いたところにある大分市の繁華街、都町。居酒屋やスナック、バーなどが入居した雑居ビルが立ち並び、周辺にはビジネスホテルも多いことから、大分に来た人の多くが立ち寄る町だ。
バーの住所は、決して新しいとはいえない雑居ビルの4階。店の看板にバリアフリーを謳っている形跡はない。通路の奥の左側にバリアフリーのバーだと聞いた、「Bar Babymoon」があった。
店の扉を開けると、マスターの関元健二さん(58)が笑顔で迎えてくれた。これまで取材は断っていたそうだが、障害者のスポーツの関係者から店のことを聞いたと言ってお願いすると、取材を受けてくれた。
広さ約10坪の店内には、カウンター6席のほか、3人掛けと2人掛けのテーブル席が1つずつ。全部で11席しかない。
車いすで動きやすいように、カウンターとテーブルの間には広い空間がある。入口から入ってすぐ左側には引き戸があり、開くと中は車いすでも使える広いトイレになっていた。
「もともとは23席あったスナックだったのですが、解体して11席の店に作り替えました。調べたわけではないですが、世界初の完全バリアフリーバーかもしれません(笑)」
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