今回採用した算定指標によるランキングで、最も社外役員比率が低かったのは医療器具メーカーのニプロ(12.1%)だった。同社の取締役社長佐野嘉彦氏の前回再任案は、業績悪化などもあったが賛成率75%以下と低く、海外投資家を中心にガバナンスを問題視した反対票が投じられた可能性がある。
また、同社は2016年に開示したCG報告書の「コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由」で、社外役員による委員会設置などの対応を検討していくとしていたが、その後当該項目で社外役員に関する記載はみられない。
2位は鉄鋼・機械専門商社の岡谷鋼機(18.2%)で社外役員は22人中4人だった。同社の社外取締役は17人中わずか1人であった。日本取引所グループが公表しているコーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、上場企業に対して最低2名以上の社外取締役の設置を求めているが、同社はその規範を満たしていない。
3位は飲料用充填装置の澁谷工業(19.2%)。多くの役員を置きながら、社外役員の割合は低い。4位には産業ガスのエア・ウォーター、パチスロ機大手の平和、賃貸住宅のスターツコーポレーションが同率(20%)で並んだ。スターツコーポレーションの代表取締役会長兼グループCEOの村石久二氏は前回再任案の賛成率が74%以下であり、今回の総会ではガバナンスを問題視した反対票で賛成率がさらに低下する可能性もある。
社外役員比率を高めた企業は社内役員を減らしている
ランキングに加えて、前年から社外役員比率を上げた企業の傾向を紹介したい。2018年に社外役員比率が3分の1未満で、2019年から3分の1以上になった企業(全373社)を分析したところ、社外役員を増やすよりも社内役員を減らした傾向が強いことがわかった。平均して社外役員が0.95人増加、社内役員が1.3人減少していた。
もちろん、役員を適切な規模に調整することは、ガバナンスの向上としては重要だ。しかし、それが「3分の1」という基準を超えるための「調整」になってしまっていたとしたら、それは好ましいことではない。
CGコードの基本原則は「Comply or Explain(従うか、そうでなければ説明せよ)」である。本来は、Comply(従う)とExplain(説明)は等価であり、社外役員を置かない(あるいは比率が低い)場合はその理由を明確にすることが必要となる。実際に、7位の東レ(20.8%)や社外取締役を置いていない72位ワークマン(28.6%)はCG報告書で、自社の事業の特性と社内者が取締役を務めることのメリットに言及している。
企業の形態や置かれている状況によっては、社外役員を多く置かない方が企業の利益、ひいては株主の利益になる場合もあるだろう。ただし、そのような場合でもそのメリットを株主に説明する必要がある。今後、各企業は制度面でのガバナンス強化だけでなく、それをステークホルダーに伝える力も強化していく必要があるだろう。
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