「ご両親にご挨拶をした次のデートのとき、康晴さんに言われたんです。『どうしてウチに挨拶に来るのに、スーツを着てこなかったの? スーツを着てきてほしかった』って。でも私、ジーパンをはいていったわけではないし、清楚なワンピースで伺ったんですよ」
また、康晴は、こんなことも言ったそうだ。
「そういうのって、ご両親や仲人さんが教えてくれなかったのかな。そういえば、お見合い写真もスーツじゃなかったよね」
この話を聞いて、私は佳代子に言った。
「就職の面接に行くわけでもあるまいし、スーツを着てお相手男性の家に結婚のご挨拶に行く女性は、まずいませんよ。少なくともウチで成婚を決めた女性たちは、ご挨拶に行くのにスーツは着ていっていないわ。
女性は女性側のサイトは見られないから、みなさんがどんな服装でお写真を撮っているか佳代子さんはわからないわよね。お見合い写真をスーツ姿で撮っている女性はまずいません。みなさん、柔らかな素材のブラウスにスカートとか、清楚なワンピース姿ですよ」
こう言う私に、佳代子が続けた。
「というか、『なんでスーツで来なかったのか』というのは、どうも彼のお母さんが言っていることのようなんです。『正式なご挨拶なのに、正式な格好もして来れないのは、育ちがわかる』って」
新居は、男性の実家を2世帯に
また、住む場所でももめたようだ。
「真剣交際中に、『結婚後はどこに住もうか』という話をしたことが何度かあったんですが、そのときは、『都内の2人が通勤しやすい場所にマンションを借りて住もう』と言っていたのです。
それが、婚約後は、『実家を2世帯に建て替える』って言うんですね。康晴さんのご実家から私の職場までは、片道1時間半かかる。それに、ご挨拶に伺ったときの服装を細かく言うようなお義母さんとは、たとえ2世帯で玄関やキッチンが別々だったとしても一緒には住みたくなかったし、それには『うん』と言わなかったんです」
さらに、結婚式でももめた。
「内輪だけでやりたい」と言っていた佳代子に「盛大にやりたい」と言っていた康晴。そこは、佳代子が折れて、康晴の会社関係者や友達や親族を呼ぶことに同意した。しかし、佳代子側は親族も少ない。小さな法律事務所で事務作業と秘書のようなことをやっている佳代子は、式に参列してもらう仕事関係者も2人か3人程度。友達も3カ月後の結婚式に、何人都合がつくかわからなかった。
「私側の招待客は、少人数でもいいと思っていたんです。友達も来れる人だけ参列してもらえばいいかなって」
ところが、康晴がとんでもない提案をしてきた。
「『両家の招待客にあまりにも差があるのは、みっともない』って親が言ってるんだ。結婚式とかに人を派遣してくれるサービスがあるから、そこを頼んだらどうかな」
それを聞いて佳代子は、仰天したとともに憤慨した。見も知らぬ人をお金で雇って結婚式に参列してもらう。誰のための結婚なのか? 何のための結婚なのか。お金で参列者を頼むなんて、そっちのほうがみっともない。
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