外国人就労拡大、くすぶる慎重論 成長戦略の検討項目へ、正式に盛り込み

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1月20日、政府は産業競争力会議で、6月に発表する予定の成長戦略改定に向けた検討方針を取りまとめ、外国人労働者の受け入れ拡大を正式に検討課題として盛り込んだ。写真は2012年12月、都内で撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 20日 ロイター] -政府は20日に開いた産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で、6月に発表する予定の成長戦略改定に向けた検討方針を取りまとめ、外国人労働者の受け入れ拡大を正式に検討課題として盛り込んだ。

少子高齢化による生産労働人口の確保を重視する市場の期待も意識した格好。ただ、政府内には慎重論もくすぶり続けており、今後の議論が注目される。

甘利明経済再生担当相は20日の会見で「外国人投資家は少子高齢化による労働者不足と、2020年代後半には団塊の世代が後期高齢者となるのにどう対応するか関心を持っている」と、同日の経済諮問会議で民間議員から指摘が出たことを明らかにした。政権の支持率を左右する株価に影響の大きい海外投資家が労働力不足を懸念しており、そのことを政権も留意していることを示唆したような発言だった。

このため、外国人労働者の受け入れ拡大や女性の活躍を促進する施策を議論。外国人の受け入れでは技能実習制度について、実習期間の延長や対象職種を介護などに拡大することを検討する。

外国人技能実習制度とは、日本の技術を途上国に移転し、人材育成を支援する制度で、国内在留外国人は現在約15万人。人手不足対策として同制度を使って外国人労働力を確保したいとの産業界の声が高まっており、現在3年の滞在期限を5年などに延長することを法務省の懇談会で議論。今年6月ごろをメドに方向性について結論を得る。

<人手不足で公共事業の進ちょく大幅遅れに>

外国人労働者が脚光を浴びる背景には、深刻化する人手不足がある。日銀が16日公表した「地域経済報告(さくらリポート)」でも、人手不足により工期の遅延など一部の業界では業務に障害もみられつつあると報告している。

特に建設業界では「震災復興の本格化、オフィスやマンション、倉庫、景気対策による工事の急増」で「現場のみならず設計部署まで人手不足」(宗岡正二・新日鉄住金<5401.T>)という状況に直面している。こうした中で、安倍政権が最重視している2020年開催の東京五輪において、準備作業の遅延を懸念する声も出ている。

自動車業界では「運転手不足で完成車の輸送に支障を来す事例もある」(業界筋)という。

2012年度の国内総生産(GDP)は、公共投資の伸びが推計値の前年度比14.9%増から確報値は1.3%に大幅に下方修正された。人手不足で公共工事の進ちょくが大幅に遅れた結果だ。

「経済財政諮問会議では、2%の経済成長を必要としているが、逆算すると労働者が足りない」(政府関係者)との声が高まり、外国人労働力の必要性について議論しようとの機運が高まってきた。

ただ、外国人労働者の性急な導入には、政府内で異論もくすぶり続けている。厚生労働省や法務省では、リーマンショック直後に日系ブラジル人労働者が大量に解雇された経緯や、治安悪化の可能性、社会保障費用が膨らんだ場合の費用負担などを考慮すると、「検討は慎重が望ましい」(関係者)との立場を維持している。

甘利経済再生相は「与党内にも、外国人を受け入れた後の社会問題化を懸念する声がある」と、この日の会見で明らかにした。

20日の公表資料では「必要な外国人材活用のあり方について、必要分野・人材等も見据えながら、国民的議論を進める」と記された。

JPモルガン証券・シニア・エコノミストの足立正道氏は「産業のイノベーションを生み出すには多様性が大切で、女性や高齢者、外国人の活用が重要」とし政府案を評価している。

しかし、コメの減反政策見直しが価格支持政策の維持などで「骨抜きとなった改革案もあり、今後の動向を見極めたい」と、6月の成長戦略のでき具合に注目している。

(ロイターニュース 竹本能文 編集:田巻一彦)

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