57歳「半分引きこもり」生活を続ける男性の日常 なかなか報道されない、中高年当事者の声
――川崎殺傷事件や練馬事件の報道を見て、どう思われたでしょうか。
一連の事件によって、ひきこもりは「犯罪者予備軍だ」という印象が強くなったのは間違いありません。
ただ、それはごく一部の人のことであり、私自身は通り魔など想像もつかないです。それにもかかわらず、ひきこもり全体のイメージとして事件が語られるのは間違っていると思わざるをえません。
もちろん、孤立感や絶望感が深く、理不尽な目にあった人は暴発することもあるでしょう。それはひきこもりだからというより、人のなかにあるさまざまな感情の混乱だと思います。
一方、そういう孤独感が強い人や、ひきこもっていて本当に苦しんでいる人に対して、どうすればいいのか、という疑問もあるかと思います。
私の場合は、家にも学校にも居場所がなくなり、中学生のころから自分が醜いという強い妄想(醜形恐怖)にとらわれました。
救われたのは、セラピストとの出会いです。その先生は、私の話をさえぎらず、否定もせず、説得もせずに、最後に「つらいでしょうね」と言ってくれたんです。
そこから変わりました。「世の中いろいろな人がいるなぁ」と思えたからです。
もちろん、すぐに苦しさは抜けませんでしたが、頭のどこかで「わかってくれる人がいる」と思えたんです。
いまは、さまざまな分野の研究者へのインタビューを通して「人と出会うことでワクワクする」という経験を積み重ねています。
苦しくても「この世に生まれた自分を殺したい」とまで思わなかったのは、苦しさに共感してくれた人と出会えたからだと思うんです。
(聞き手・石井志昂)
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