57歳「半分引きこもり」生活を続ける男性の日常

なかなか報道されない、中高年当事者の声

――川崎殺傷事件や練馬事件の報道を見て、どう思われたでしょうか。

一連の事件によって、ひきこもりは「犯罪者予備軍だ」という印象が強くなったのは間違いありません。

ただ、それはごく一部の人のことであり、私自身は通り魔など想像もつかないです。それにもかかわらず、ひきこもり全体のイメージとして事件が語られるのは間違っていると思わざるをえません。

「ひきこもり全体のイメージとして事件が語られるのは間違っていると思わざるをえません」と語る杉本さん(写真:不登校新聞)

もちろん、孤立感や絶望感が深く、理不尽な目にあった人は暴発することもあるでしょう。それはひきこもりだからというより、人のなかにあるさまざまな感情の混乱だと思います。

一方、そういう孤独感が強い人や、ひきこもっていて本当に苦しんでいる人に対して、どうすればいいのか、という疑問もあるかと思います。

私の場合は、家にも学校にも居場所がなくなり、中学生のころから自分が醜いという強い妄想(醜形恐怖)にとらわれました。

救われたのは、セラピストとの出会いです。その先生は、私の話をさえぎらず、否定もせず、説得もせずに、最後に「つらいでしょうね」と言ってくれたんです。

そこから変わりました。「世の中いろいろな人がいるなぁ」と思えたからです。

もちろん、すぐに苦しさは抜けませんでしたが、頭のどこかで「わかってくれる人がいる」と思えたんです。

いまは、さまざまな分野の研究者へのインタビューを通して「人と出会うことでワクワクする」という経験を積み重ねています。

苦しくても「この世に生まれた自分を殺したい」とまで思わなかったのは、苦しさに共感してくれた人と出会えたからだと思うんです。

杉本賢治(すぎもと けんじ)/1961年、札幌市生まれ。高校を中退後と20代後半に長期間、ひきこもった。ひきこもり期間は累計9年半。現在はフリーターのかたわら、『ひきこもる心のケア』(世界思想社)を出版。WEBサイト「インタビューサイト・ユーフォニアム」運営。

(聞き手・石井志昂)

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