日経平均が暴落する危険性は全く消えていない

アメリカの株式市場は浮かれすぎている

毎週の失業保険に関する統計は木曜日に公表されるが、1週間の新規の失業保険申請件数(5月25日に終わった週)は、当初公表値の21.5万件から21.8万件に上方修正(雇用の悪化方向への修正)となり、次の週(6月1日に終わった週)では、同じ21.8万件を維持する形となった。長い目で見ると、新規申請件数は、増えてきたとは言い難いが、減少が止まりつつあるように見受けられる。また、継続して失業保険を受給している数は、5月25日に終わった週が165.7万人から166.2万人に修正されたうえ、6月1日に終わった週の分も168.2万件と膨れ上がっている。

こうした、雇用情勢に対して不穏なデータが発表されていたところ、前週末7日に発表された5月の雇用統計では、注目されている非農業部門雇用者数が、前月比でわずか7.5万人の増加となった。最近では、今年2月に前月比が5.6万人の極めて小幅な増加にとどまったが、これは当時の大雪など厳しい気象の影響であった。今回はそうした特殊要因無しの雇用者数の伸び悩みであるため、今後の米国の雇用と個人消費の先行きが、懸念される。

この雇用統計を受けての同日のアメリカの株式市場は、主要な株価指数が前日比1%以上の上昇をみせた。これは、連銀の緩和が行なわれる公算が一段と強まった、という解釈による株高なのだろう。しかし、前述のように、景気が悪いからこそ連銀が利下げに追い込まれるわけだ。

通常、株式相場は、業績相場(好業績による株価上昇)→逆金融相場(景気過熱に対応するため金融引き締めが行なわれ、景気にも陰りが表れるため、株価が下落する)→逆業績相場(景気が本格的に悪化し、金融政策は緩和に転換するが、景気の悪化が止まらず株価が下落し続ける)→金融相場(金融緩和が何度も行なわれ、その累積効果から、景気悪化にある程度歯止めがかかり始め、株価が上昇する)というサイクルをたどる。

実際の相場はそれほどきれいにサイクルの通りに動くわけではないが、先週末のアメリカの株式市場は、逆業績相場なしにいきなり金融相場が示現するかのような浮かれぶりだ。これからやってくるのは、本格的な景気と企業収益の悪化による逆業績相場であって、何度も金融緩和が進められてようやく金融相場に入るのは、まだ先だ(ただ、今年中には金融相場に入ると見込んではいる)。

日本でも消費に不安、増税も悪材料

一方、日本経済に目を転じると、消費者態度指数で示される消費者の心理は、5月までほぼ悪化の一途をたどっている。7日に発表された統計のなかでは、4月の実質賃金(物価上昇分を除いたもの)は前年比で1.1%減少した。名目でも0.1%減で、その内訳では、所定外給与が1.1%減ったことが影を落としている。これは働き方改革の影響が大きいとはいえ、残業減で手取りが減ることが消費者心理を圧迫している可能性がある。

同日発表の4月の家計調査では、消費支出が前年比で1.3%増えたとのことだ。大型連休による交通費の出費増(「交通・通信」は前年比12.1%増)が大きく寄与したとみられるが、その分家庭用耐久財の支出が切り詰められたと、総務省は分析している。連休後の支出全般も、かなり削られているのではないか、と懸念される。

消費動向に暗雲が立ち込めるなか、自民党は6月7日に発表した参議院議員選挙の公約に、予定通りの消費増税を盛り込んだ。一部市場参加者の「政府・自民党は、消費増税延期を公約に掲げて、衆参ダブル選挙に打って出るだろう」との楽観論は、打ち砕かれた形だ。

こうした内外の悪材料を鍋に入れて煮詰めれば、いずれ(おそらく7~9月に)日経平均株価が1万6000円前後に落ちる、というシナリオは変わらない。今週の日経平均株価は、滑り出しは先週末のアメリカ株上昇や対メキシコ関税見送りの報道もあって、上昇が持続するもしれないが、次第に力を失いそうだ。価格のレンジとしては、2万円~2万1200円を予想する。

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