AIの発達は「会計士の仕事」を駆逐するのか 監査法人のビジネスモデルが変わる可能性も
カネボウやオリンパス、東芝など、近年の会計監査をめぐる大きなテーマは不正会計をいかに防ぐかという戦いだった。では、テクノロジーが導入されれば、不正会計や会計不祥事といったことはなくなるのだろうか。
EY新日本の加藤信彦パートナーは「サイバーセキュリティーなどと同様、新しい手法が生まれるのが世の中の常で、不正会計の手法も日進月歩している。会社側が財務諸表をつくっている時点で、お手盛りのリスクがある。いまの監査制度の限界だ」と打ち明ける。
会計士はマネジメント力が求められる
しかし、そうした未来を実現するには、さまざまな課題を乗り越える必要がある。1つはテクノロジーに通じた会計人材をいかに育成していくか。
「入社3、4年目くらいの若手がやってきた、現場の資料を1つずつ丹念に読み込んでいくキャリアが積めなくなる。それなくしても判断ができるような教育をしないといけない」(PwCあらたの久保田氏)
これまで会計士中心の組織だった監査法人にデータサイエンティストら、違う世界のプロが入ってきて、会計士は彼ら彼女らを束ねるような、マネジメント的役割を求められる。資料を現場に取りに行く必要がなくなれば、働き方も変わっていくかもしれない。
言語やシステムの壁もある。M&Aが活発になり、海外に子会社をもって展開することが普通になっている。「欧米企業と比べて日本企業のほうが子会社の独自性を尊重する傾向にあり、親会社と子会社でシステムも別々になりがち。世界でシステムを統一する場合に英語で統一できるかというと日本企業の場合は難しい」(あずさの小川氏)。その結果、日本だけ別システムというケースが多く、データ統一の妨げになっている。
業界全体を考えれば、大手監査法人と中小監査法人の格差も考える必要がある。海外大手と連携する4大法人のような大手であれば対応可能だが、中小監査法人はそこまでの余力はない。
日本公認会計士協会の次期会長で、同協会の報告書『次世代の監査への展望と課題』の作成に携わった手塚正彦常務理事は「IT化にはお金がかかる。資力のない中小法人がITをどう実装していくか、協会としても課題として認識している」と頭を悩ませる。
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