新型「ポルシェ911」の姿形は何が変わったのか エクステリアデザイナーが語った魅力とは

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1974年式911(タイプ930)(筆者撮影)

写真で紹介する1974年式タイプ930は全長4291mm、全幅1610mm、全高1330mm、ホイールベース2271mmで、新型はそれぞれ4519mm、1852mm、1300mm、2450mmとなる。世代を経るごとに肥大化しているのは多くのクルマに共通するが、もっとも拡大しているのが全幅というのは珍しい。

911はスポーツカーとしては背が高い。これが実用性の高さにつながっているわけだが、それを保ちつつ、フェラーリのようにワイド&ローに見せたいという気持ちが、この寸法と造形につながったのかもしれない。

911は伝統と革新の融合

インテリアはエクステリアに比べるとかなり変貌した。タイプ996以降の911は、センターコンソールを強調する造形となっていたが、新型は空冷エンジン時代のような水平基調に戻った。

1974年式911のインパネ(筆者撮影)

水冷エンジン911の中でも、スロープしたセンターコンソールに多くのスイッチを並べたタイプ991のそれは、ポルシェ好きからも褒め言葉はほとんど聞かれなかった。近年の操作系のトレンドが、ボルボに代表されるスイッチを少なくする方向性ということもあり、大きく変えたのだろう。

個人的に好感を抱いたのは、山下氏がウイングと呼んでいた上下2段の張り出しと、間に収まった10.9インチのディスプレイで、下側がパームレストになるので確実な操作ができそうだった。

プレゼンテーションでは、911は伝統と革新の融合というフレーズが聞かれた。インテリアはたしかにそうだったが、エクステリアは山下氏が何度も使った「ワイド」「モダン」のほうが当てはまると思った。モダンは辞書で調べると現代的、つまり時代に合っているという意味で革新とは違う。

911は機能で買うユーザーが多いスポーツカーであり、デザインについては911に見えることが大事で、それ以上の魅力はあまり求められていない印象がある。デザイナーとしては新規性を盛り込みたいだろうが、変えすぎるとファンからノーを突きつけられる。丸目のヘッドランプを止めたタイプ996がそうだった。911のデザインは難しいという気持ちは、おそらくポルシェ内部の人も抱いているのではないだろうか。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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