日本人がまだ知らない「30%クラブ」の本気度 機関投資家が注視する出世の「パイプライン」

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――30%クラブの中でも重要な役割を果たす機関投資家の集まり「インベスター・グループ」のチェアとして、活動予定です。具体的には、何をするのでしょうか。

ハイマス:TOPIX100企業の取締役会における女性の割合を、2020年末までに最低でも10%に引き上げること、そして2030年までには30%に引き上げることを目指します。

チェアとしての活動予定は……(撮影:梅谷秀司)

具体的には、投資先企業のコーポレート・ガバナンスの問題に積極的に関与していきます。例えば投資先企業を訪問し、取締役会だけでなくあらゆるマネジメントレベルにおけるジェンダーダイバーシティの状況を把握して開示します。

役員に女性を増やすためには、候補となる上級管理職に女性を増やす必要があります。一般の従業員から管理職、上級管理職から役員へと上がっていくルートを「パイプライン」と呼びますが、私たち投資家は投資先企業のパイプラインが適切な状況になっているか関心を持ち、情報収集し、情報開示を行う予定です。

また、機関投資家が集まることで、投資先企業との対話のやり方について情報共有したり、よりよい方法を探ることもできると考えています。

女性が活躍する素地ができつつある

――2015年に成立した女性活躍推進法は、雇用主に女性の活躍状況を把握し、都道府県の労働局を通じて情報開示することを求めています。インベスター・グループは、この法律を効果的に運用する役割を担っているようにみえます。

ハイマス:はい。30%クラブ日本の発足は、タイミングがとてもいいと思います。アベノミクスで女性活躍と経済成長の関連性が認識されてきたことに加え、コーポレート・ガバナンスの観点からも女性役員が求められるようになってきました。

私たちは機関投資家、政府、メディア、プロフェッショナルファーム(コンサルティングファーム、弁護士事務所など)、エグゼクティブサーチファーム、大学など、ダイバーシティの推進に関わる重要なステークホルダーが協力するプラットフォームです。すでにある法律を生かし、それぞれの得意分野を生かして変化を後押ししていく役割を担っています。

女性が意思決定層に増えることは、女性にとってチャンスが広がるだけでなく、意思決定の質が上がり、企業の中長期的な業績向上につながるため、皆にとってよいことだ、という認識が広まりつつあります。

一例を挙げれば、わが社が運用している女性活力日本株ファンドは、設立以来TOPIXを上回るパフォーマンスを上げています。

――日本在住28年とうかがいました。30%クラブは日本の女性活躍の質を変えるでしょうか。

ハイマス:今、とてもエキサイティングな時期だと思います。日本社会はとても慎重で、新しい変化をじっくり見定める傾向があります。ただし、いったん潮目が変わると加速度的に変わる特徴もあるのが面白い。

ジェンダーをめぐる日本社会の状況は、今、まさに大きく変わろうとしていると感じます。少子高齢化で人口が減り、産業は労働集約型から頭脳労働中心に変わってきました。女性が活躍する素地ができてきたなか、私たち投資家も動き始めます。

ジャーナリストの皆さんには、ぜひこの歴史的な変化をよく見て建設的に捉えてほしいです。そして、来るべき変化について、恐れではなく統計と事実に基づいた報道をしていただけたらと思っています。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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