長期戦に突入か サッポロビール争奪戦の行方
強行? 売却?
スティールは劣勢の感が否めない。敵対的TOBを強行しても、サッポロが今回導入した新株予約権を使った買収防衛策を発動すれば、同社株の1株当たりの価値が激減する。これでは元も子もないため、予約権発行の差し止め請求など法廷闘争に持ち込むはずであり、問題の長期化は必至だ。スティールは、“塩漬け”は避けたいだろう。
ならば買収提案を取り下げて、市場で売却する道もある。2004年に300円台から買い進めた同社株は今や880円まで上昇、含み益は250億円程度と試算される。ただし、17%もの株式は市場で売却するにも、そうそう買い手がつかない。スティールが株売却を進めていることが大量保有報告書で明らかになれば、株価が急落するおそれもある。
株式を丸ごと他社に買ってもらうにも、ホワイトナイト候補と目されたアサヒビールやキリンビール、そしてサントリーは買収の可能性を完全否定している。17%という中途半端な持ち分の引き取り手を探せるだろうか。
一方、サッポロは徹底抗戦の構えだが、肝心の足元の状況は決して順風ではない。
会社側は07年12月期の業績を営業利益137億円(前年比59%増)と計画。「今のところ、ほぼ計画線に沿って推移している」と、サッポロビールの寺坂史明専務は胸を張るが、2月に市場投入した新製品「うまい生」(第3のビール)のセールスは振るわない。この苦戦を、『エビスビール』の伸びで補う状況である。
少子高齢化を背景に、ビール系飲料市場は縮小傾向が続いている。さらに、最盛期に向けてアサヒとキリンが積極販促に乗り出せば、たちまちサッポロはシェアを失うおそれもある。
「サッポロの理論株価は750円程度」(モルガン・スタンレー証券、出村泰三アナリスト)との試算もあり、皮肉にも現在の高値はスティールが支えている状態だ。結局、最大の買収防衛策は企業価値を向上させ、株価を上げることである。確かに、新しい買収防衛策の導入で敵対的買収のリスクは低下した。が、サッポロにはビール事業の再生という根本的な問題が残されたままと言える。
(書き手:前田佳子 撮影:風間仁一郎)
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