JR中央線と京王線、着席通勤ならどちらを選ぶ? 新型車両投入しサービス向上に切磋琢磨

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「はちおうじ」と「京王ライナー」を比較すると、それぞれに強みと弱みがあることがわかる。居住空間やトイレがあることを重視する場合は「はちおうじ」が、料金の安さを取る向きには「京王ライナー」に、それぞれ軍配が上がる。

東京まで利用する場合には「はちおうじ」の利便性が高い。しかし、府中や聖蹟桜ヶ丘、高幡不動など中央本線から離れたエリアと都心の間の着席保証列車は「京王ライナー」一択となる。立川も中央本線特急に選択肢は限られる。

両者ともにサービス向上の余地

「京王ライナー」の潜在能力をさらに引き出すために、都営新宿線への乗り入れを是非実現したいところだ。「はちおうじ」がカバーできない、市ヶ谷や神保町、岩本町などの発着利用を掘り起こせる可能性がある。

特急「はちおうじ」に使われるE353系の車いす対応トイレ(編集部撮影)

また、明大前での旅客扱いを検討することも選択肢の1つであろう。渋谷など井の頭線各駅と府中以遠の間を往来する利用者には着席通勤の選択肢がないが、井の頭線各駅と「京王ライナー」停車駅の間の潜在的な着席需要は小さくないと考えられる。そして、L/Cカーであっても、リクライニングシートや洗面所・トイレの設備を備えることで、「はちおうじ」に対する競争力をさらに高めることができるはずだ。

5月27日からJR中央本線快速でトイレ設置車両の導入が順次始まったこと(使用開始は2019年度末以降)は、京王電鉄にとって無視できない動きではないだろうか。JRと京王の競争による、着席保証列車を含むサービスのさらなるレベルアップが望まれる。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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