「Hanako世代」の定年後がかなり憂鬱な理由 男社会に順応した女性は定年後も生きづらい

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女性に男性脳が備わっていると、会社のような男性社会では意思疎通がしやすく、とても便利です。ところが、会社を離れて地域社会、あるいはフルタイムで働いた経験のない女性が多く集まる場所に行くと、ストレスを感じやすくなるといいます。

とくに地域社会のようなところでよくあるのが、物事などを話し合って決めるために集まったはずなのに、いろんな人がそれぞれの価値観に基づいて無秩序に意見を言い、カオスのような中で物事が決まりづらい状況に陥ることです。

これに、長年会社勤めをしてきた女性の多くは驚くとともに、正直イライラしてきます。そこで、新参者にもかかわらず早く結論に導こうと口を開こうものなら、「わかっていないくせに」と、厳しい視線にさらされます。

とくに、地域の活動に貢献してきた専業主婦が多い町内会などでは要注意です。地元の仲良しの奥様にお伺いしたところ、仕事モードの男性脳発言は、もしそれが男性によるものであれば、「仕方ないよね、オジサンはわかっていないから」と許容されやすいようですが、同姓の女性に同じことを言われると、外でバリバリ仕事をしてきたことをひけらかされているようで許せないのだそうです。

定年を迎えた男性が地域に溶け込みにくいとよくいわれますが、ずっと働き続けてきた女性の場合、さらに難しいといえそうです。

「世間とのズレ」を自分で気づきにくいだけに厄介

「会社の常識は、世の中の非常識」だとよくいわれます。1つの組織では当たり前のことでも、それは必ずしも世間の常識ではないという意味です。確かに、組織ごとに独特の価値観があって、それが必ずしも一般的ではないのは外に出てみないとわからないものです。

もちろん、転勤などで職場が変わることがありますが、それはしょせん、社内異動にすぎません。やはり、1つの組織にいるとそこでの常識やカルチャーに染まり、それが自らの価値基準になりやすいので、当然、視野も狭くなります。違う価値観を持つ人たちとコミュニケーションしてみて、初めて自分と世間の「ズレ」に気づくのです。

例えば、食事会の幹事をするとしましょう。これが同じ会社の仲間であれば、給料体系が同じで生活様式も似通っているので、普段使うお店の好みや予算などがだいたいわかります。ですから、それほど苦労することはありません。ところが、高校時代の友人のように長らく会ってない人たちとの会合の場合、それぞれの家計状況、普段行くお店のタイプも人それぞれなので、お店選び1つとっても気を使うのです。

働く女性が増えるにつれ、かつてのように「女性のくせに」といわれる場面は昔に比べればかなり減っていると思います。だとすれば、「男性脳&会社脳」を持つサラリーマン女性の定年後の居場所は「働く場」に求めたほうが、断然、居心地がよさそうです。次回は、仕事で稼ぐことについてお話ししたいと思います。

大江 加代 確定拠出年金アナリスト

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おおえ かよ / Kayo Oe

大手証券会社に22年勤務、サラリーマンの資産形成にかかわる仕事に一貫して従事。退社後、夫の経済コラムニストである大江英樹氏(株式会社 オフィス・リベルタス 代表)を妻として支える一方、確定拠出年金の専門家としてNPO確定拠出年金教育協会 理事、企業年金連合会 調査役として活動。野菜ソムリエの資格も持つ。

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