エディオン・ビック、幻に終わった統合劇 ヤマダ電機の独り勝ち、止まらず

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エディオン・ビック 幻に終わった統合劇

わずか2カ月での経営統合撤回に対し、業界の目は冷ややか。ヤマダ電機の独り勝ちは止まらない。(『週刊東洋経済』4月14日号)

家電量販店業界2位のエディオンと同5位のビックカメラは、3月30日、経営統合計画を白紙に戻す、と発表した。両社は2月8日に「2年後をメドに経営統合を目指す」と発表したばかり。業界首位に躍り出るはずが、あっという間の“電撃破局”となった。

今回、統合の白紙撤回を申し入れたのはビック側。「もともと経営統合を前提としていなかった」とビック幹部は今さらのように語る。「それにもかかわらず『ビックがエディオン傘下に入る』との報道が相次ぎ、社内が動揺した」(同幹部)。エディオン側も「不安があるなら経営統合の話はやめる」と了承した。

が、この電撃破談はサプライズではない。「やはりダメになったか」と大手量販店幹部が語るように、業界の見方は冷ややかだ。「そもそも、2年後の経営統合なんて遅すぎる。そんなのんびりした関係でうまくいくはずがない」とみられていたためだ。

ビックは創業者で約72%の株式を握る新井隆二会長のオーナー色が強い会社だ。そもそも、両社の提携を今年に入ってから急きょまとめたのは新井会長。「結局、エディオンの久保允誉社長が新井会長に振り回されたのだろう」(大手メーカー幹部)。

統合が破談になったとはいえ、両社は「業務提携委員会」を設置し、役員の相互派遣や独自商品の開発、物流網の共有などについて業務提携を継続する構えだ。株式3%の相互保有も続ける。

しかし、提携には限界がある。両社が仕入れを一本化し、スケールメリットを得るためには、メーカー側の取り決めにより40%以上の資本提携関係が必要。業務提携もどれだけ効果が上がるのか未知数だ。両社の関係は事実上、振り出しに戻ったといっても過言ではない。

エディオンは、昨年から今年にかけて東京の石丸電気、北陸のサンキューにも相次いで出資したばかり。しかも提携策の具体化は、まだこれからだ。売り上げ規模拡大を急ぐあまり、エディオンの久保社長は浮き足立っていたと見られても仕方がないだろう。

今回の破談で勢いづくのは、ほかでもない業界首位のヤマダ電機だ。2007年3月期売上高は1兆4000億円超に上るとみられる。ヤマダ独り勝ちを止められる勢力は現れるのだろうか。

中島 順一郎 東洋経済 記者

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なかしま じゅんいちろう / Junichiro Nakashima

1981年鹿児島県生まれ。2005年、早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、東洋経済新報社入社。ガラス・セメント、エレクトロニクス、放送などの業界を担当。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などを経て、2020年10月より『東洋経済オンライン』編集部に所属

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