「体罰で子供しつける」が許されない納得の理由 うつ病や依存症になるリスクが高くなる

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なお、「体への罰」だけでなく、言葉による傷つけ、暴言、いきすぎた叱咤激励も、子どもの心にダメージを残すことが知られています。親の暴言が子どもの知能指数を下げるという研究データも、アメリカや韓国などで出されているのです(※2 Violence exposure, trauma, and IQ and/or reading deficits among urban children. Arch Pediatr Adolesc Med. 2002 Mar; 156 (3): 280–5. Delaney-Black V)。

臨床心理士の奥田健次氏の著書『メリットの法則』には、褒めて伸ばす指導を「アメ」、叱責や体罰を与える指導を「ムチ」に例えた場合の、ムチの副作用について以下のように書かれています(大意)。

① 行動自体を減らしてしまう
② 何も新しいことを教えたことにならない
③ 一時的に効果があるが持続しない
④ 体罰をする側は罰的な関わりがエスカレートしがちになる
⑤ 体罰を受けた側にネガティブな情緒反応を引き起こす
⑥ 力関係次第で他人に同じことをしてしまう可能性を高める

それでも体罰を肯定したい人たちは、次のように言うかもしれません。

「両親や部活動の顧問や先輩から体罰を受けたことがあるが、深い愛情を感じた。体罰によって自分を戒め、スキルアップできたと思う」

「褒めて伸ばす指導をしたこともあるが、結果がついてこなかった。やはり効率よく効果を上げるには、体罰に勝る指導はないと感じた」

「校内暴力や学級崩壊などの力による反抗に対しては、指導者側も力を使ってでも立ち向かっていくべきだ」

教師の体罰は「指導力不足」なだけ

このような主張をされると、もしかしたら納得してしまう人もいるかもしれません。でも、裏を返せば、体罰よりも効果が高くて効率がよく、かつ子どもの体や心を傷つけることなく指導する方法を知らなかったというだけの話です。

学級崩壊、生徒の教師への暴力の解決策は、教師が報復的に体罰をすることではありません。警察や保護者や教育委員会、ソーシャルワーカー、スクールカウンセラーなどをはじめとした第三者の介入が必要です。余裕のない状況は思考的視野狭窄を起こすので、こじれた問題を当事者同士だけで解決しようとすることはおすすめできません。思考的視野狭窄は、判断力を低下させ、通常ならありえない意思決定を招く要因になります。

では、子どもに何かを教えるとき、体罰ではなく、どのような手段をとるといいでしょうか。

発達障害のある子どもを持つご両親向けの指導法に「ペアレント・トレーニング」というものがあります。これは「養育者が子どもにとって最高の指導者になる」との考え方から、養育者に子どもへの接し方や指導法のトレーニングをしてもらうというものです。本来は全10回のプログラムを隔週で、レクチャーと家庭での課題を段階的に半年かけて行います。

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