スカイマークはこうやって消耗戦から脱する 西久保社長が語る、航空業界で生き残る術(すべ)

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快適なシートは供給過剰ではない

――現在使用しているB737型機の座席数177席に対して、新たに導入するA330型機の座席数は271席と5割以上増える計算になる。ただでさえ、LCC台頭で供給過剰になっている中、座席が埋まらない不安もあるのでは?

供給過剰なのは、座り心地の悪い、狭いシートだけ。座り心地のいい快適なシートは多くのニーズがあるのに、今は供給数が絶対的に少ない。その証拠に、JALの「クラスJ」(1000円の割増料金で予約できる広めのシート)はいつも満席だ。安い運賃で広いシートを望むお客さんの多さを考えれば、たとえば羽田―福岡線を今の1日11便から10便、もしくは9便程度に減らすぐらいの調整で十分だと考えている。

にしくぼ・しんいち●1955年生まれ。神戸大工学部卒。ソード電算機システム(現・東芝パソコンシステム)などを経て、ネット接続会社を創業。2003年スカイマークに出資して筆頭株主となり、翌年から現職

――なぜ、最新鋭機ではなく、登場から20年近くを経たA330を選んだのか。

今、この席数の飛行機でA330は最も安い。確かにB787など最新鋭のテクノロジーを使った飛行機もあるが、A330でも十分快適な環境をお客さんに提供できる。エアバスには、ぜひともこの機体を末永く生産していただきたいと思っている(笑)。

――今年の年末には、旅客機として世界最大のA380型機を導入して、いよいよ国際線にも進出する。改めて、その意図を聞かせて欲しい。

国際線進出に向けてA380導入の基本合意を交わしたのは2010年だったが、それ以前から、「いずれはLCCが参入して、国内線も激しい消耗戦になるだろう」という読みがあった。

LCCは非常に参入障壁が低いビジネスモデル。極端な言い方をすれば、小型のA320かB737を数機買って、サービスを省いて運賃を安く設定するだけ。こんな簡単なビジネスモデルだから、どこかが参入してくるのは目に見えていた。

じゃあ、LCCがどんどん参入してきた時に、われわれは生き残るために何をすべきか。それをずっと考えて、出した結論が、国内線でのプレミアムシート導入と長距離国際線への進出という2つの戦略だった。

同じ国際線でも、(アジアへの)近距離国際線はLCCと過当競争になるのがわかっていたから、最初からやる気はなかった。一方、(北米など)長距離国際線のビジネスシートは料金が高止まりしており、ここに出ていかない手はない。国際線でも、大手より割安な運賃で快適なシートを提供する戦略で、十分に勝算はあると考えている。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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