アメリカと関係急悪化、「イラン戦争」の現実味 ホルムズ海峡封鎖の可能性も浮上
イランは保守穏健派のロウハニ大統領を表の顔とするが、政権は一枚岩ではなく、周辺国に敵視される十分な理由がある。政治や経済の分野でも力を持つ革命防衛隊は、介入したシリア内戦での実質的な勝利やトランプ大統領の中東への関与縮小の流れを見て、イエメンのフーシ派やレバノンのシーア派武装組織ヒズボラ、パレスチナのイスラム組織ハマスやイスラム聖戦への支援を強めている。
こうしたイランのゲリラ的な組織に対する支援活動の脅威を受けているのが、サウジやUAE、イスラエルである。サウジは2015年にイエメンに軍事介入したものの、フーシ派の抵抗に手を焼き、「世界最悪の人道危機」と言われるような悪評を突き付けられている。
ロケット弾におびえるイスラエル
昨年10月に実質的な指導者であるムハンマド皇太子が関与したと目された著名サウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件でアメリカとの関係がぎくしゃくし、イエメン内戦での協力も怪しくなってきた。サウジは、イランがフーシ派にミサイルや無人機の技術や資材を提供していると見ており、イランの弱体化を望んでいる。
イスラエルもイランの現実的な脅威にさらされている。筆者がイスラエルの商業都市テルアビブに滞在していた3月25日の早朝、ガザ地区から発射されたロケット弾がテルアビブ北部の町の民家を直撃し、7人が負傷した。イスラエルでは、ロケット弾を警戒する携帯電話向けのアプリも国民生活の一部になっている。
ヒズボラは、10万発以上のロケット弾やミサイルを隠匿してイスラエルに照準を合わせているといわれる。ハマスやイスラム聖戦、ヒズボラはイランからミサイルや技術の供与を受け、着実に戦闘力を強化しており、イスラエルが看過できないレベルに達しているのだ。
このため、イスラエルは、ヒズボラへの武器供給拠点になっているシリアのイラン関連施設を繰り返して空爆しているものの、決定的な打撃は与えられていない。一方で、イスラエルによるイラン本土への直接攻撃は、核開発に絡んで何度も取り沙汰されてきた。あるエジプト人研究者は最近、イスラエルが近くイランを攻撃する可能性が高いと語っている。
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