アメリカと関係急悪化、「イラン戦争」の現実味 ホルムズ海峡封鎖の可能性も浮上

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今後の展開次第だが、原油輸出の大幅な削減によって追い詰められたイランが、ウラン濃縮や重水貯蔵量の制限を破棄することになれば、イスラエルによる先制攻撃の危険性は増すだろう。

トランプ大統領もイランの政権指導部も戦争は望んでいないとみられるが、アメリカ軍のイラン近海での展開により、偶発的に戦争へと発展する懸念が強まっている。イギリスのハント外相は13日、「双方が意図せずとも結果的に衝突に発展する危険があることを非常に危惧している」と語っている。仮に戦争に発展した場合、どのような展開になるのだろうか。

アメリカ軍が懸念しているのは

イランがホルムズ海峡を封鎖できる可能性は極めて低く、可能だったとしても一時的との見方が一般的だ。ペルシャ湾を挟んだカタールには、地域最大の1万人を超すアメリカ軍兵士が駐留する基地があるほか、バーレーンには、アメリカ海軍第5艦隊の司令部が置かれている。 空母「エイブラハム・リンカーン」もイランの近海に向かっている。

アメリカ軍が懸念するのが、軍事力が圧倒的に異なる「非対称戦争」である。海軍力でアメリカ軍に圧倒的に劣る革命防衛隊は、ホルムズ海峡の封鎖を試みる場合、機雷を敷設するだろう。また、ミサイルやロケット弾で武装した小型の高速艇がアメリカ軍の艦艇や大型タンカーを攻撃したり、自爆型の無人航空機を突撃させたりするシナリオも取り沙汰されてきた。

アメリカのシンクタンク、ワシントン中近東政策研究所は昨年7月にウェブサイトに掲載した論考で、「イランがホルムズ海峡を完全に制圧することは極めて考えにくい」「短時間にわたって海峡の封鎖に成功したとしても、アメリカ海軍の直接的な攻撃を前に(封鎖が)続くことはないだろう」と分析している。

イランがホルムズ海峡封鎖に乗り出せば、原油相場は急上昇し、日本を含めた世界の経済活動に大きな影響を与えることは確実。戦争にサウジやイスラエルも絡んでくる可能性があり、その場合、中東が大混乱に陥るのは避けられない。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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