トヨタ、売上高30兆円超でも恐れる「敵」の正体 最大の脅威は「トヨタは大丈夫だと思うこと」

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CASEの各分野での勝敗がつくのはこれからだが、現時点でトヨタの経営は盤石に見える。研究開発費(1兆0488億円)や設備投資(1兆4658億円)、株主還元(普通株配当と実施ベースの自己株式取得額合計、1兆1767億円)はそれぞれ年間1兆円を優に超える一方、8%を超える営業利益率を保っているからだ(数字はいずれも2019年3月期)。

2018年6月の「THE CONNECTED DAY」に登壇した豊田社長。コネクティッドの新技術を搭載した新型「カローラ スポーツ」(左)と新型「クラウン」をお披露目した(撮影:風間仁一郎)

豊田社長はトヨタにとって最も脅威になるものは何かと会見で問われると、「トヨタは大丈夫だと思うこと」と述べ、次のようにつけ加えた。

「日々いろいろな変化が起きている中で、これだけ大きな会社としてすべての変化に神経を研ぎ澄まして追随していこうとしているときに『社長、何を心配しているんですか』というのが、私にとっては一番危険な言動だ」。

戦うべき相手は「社内の慢心」

トヨタが戦うべきは「社内の慢心」であり、言うならば「内なる敵」ということだろう。それがはっきりしたのが今年の春闘だ。賞与の回答は夏しか出ず、冬については継続協議になった。その理由として経営側は「トヨタの置かれている状況についての認識の甘さ」を指摘し、現時点で年間の賞与を回答することは「時期尚早」とした。

直近の業績を見れば満額回答であっても何ら不思議はないが、そうした「常識」や「慣例」は慢心が生まれる温床にもなる。トヨタのある中堅社員は、「提携しているウーバーや(シンガポールの配車大手)グラブの仕事の進め方は驚くべき速さだ。この速さに食らいついていかないとトヨタの将来はない」と豊田社長が抱く危機感を共有する。

今年6月で就任10年となる豊田社長は「トヨタらしさを取り戻す風土改革は道半ばだ。企業風土や文化の再構築は私の代でできる限りやる覚悟だ」と語気を強めた。トップが危機感を伝えなくても社員が自律的に動く組織に変わり、「内なる敵」を克服することができた時、豊田社長の改革は成功したと言えるかもしれない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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