トヨタ、売上高30兆円超でも恐れる「敵」の正体 最大の脅威は「トヨタは大丈夫だと思うこと」
ホンダもかつて推し進めた拡大路線の弊害を被っている。2019年3月期の売上高は過去最高となったが、営業利益は7263億円と前期を12.9%下回った。主因は4輪事業の不振だ。4輪事業の営業利益は2096億円と前期から約4割も減少。最大市場のアメリカでセダンの販売が減少したことや欧州における4輪の生産体制変更が響いた。
ホンダの4輪事業の営業利益率は1.9%とトヨタの4分の1の水準だ。生産能力が過剰である一方、生産の効率化が遅れていることがその理由だ。「体質強化を確実に進め、2025年までに4輪車の既存ビジネスを盤石にしたい」。ホンダの八郷隆弘社長は5月8日の決算発表に合わせ、4輪事業の収益改善策を発表した。
「シビック」などのグローバル車種の派生モデル数を2025年までに3分の1に削減し、生産能力は2022年に現在の555万台から約1割削減し、507万台とする。こうした取り組みで4輪生産コストを2018年に比べ1割下げ、4輪事業の営業利益率も7%水準を目指す。
トヨタとホンダの明暗を分けた平時の展開
ホンダが生産能力過剰に至った発端は、2012年に伊東孝紳・前社長が打ち出した「2016年度に四輪販売600万台」という数値目標にある。伊東前社長は2009年6月に就任。世界各地に新工場を作り、各地域に専用モデルを投入したが、開発を担う本田技術研究所はリソースが逼迫し、開発や生産の効率化が遅れる結果となった。
そのホンダの伊東社長と同じタイミングで2009年に社長に就任したのが豊田社長だ。豊田社長は「最初の3年間は、リーマンショック後の赤字転落、アメリカに端を発した大規模リコール問題、東日本大震災、タイの大洪水など危機対応に明け暮れた」と振り返る。就任して間もない2010年にアメリカの公聴会で品質問題について謝罪するという修羅場を経験。この後、平時に戻った後の展開がトヨタとホンダの今を左右することになる。
豊田社長は「競争環境が悪化した時でも着実に成長し続ける会社になるためには、とにかく競争力をつけなければならない」と考え、「年輪経営」を経営の軸に据える。2012~2015年の3年間は「意志ある踊り場」と表現して改革に取り組んだ。短期的な生産・販売の拡大を求めることを一度やめ、新工場の建設も凍結する。
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