富士フイルム「チェキ」、年1000万台なぜ売れる デジタルにはない「アナログ感」が人気呼ぶ

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富士フイルムは2018年5月からテイラー・スウィフトさんをプロモーションに起用している。高井氏は「彼女に新製品を渡したら、まったく説明していないのに一人で準備して楽しみ始めていて、本当に好きなのだと実感した」と振り返る。2018年度の当初の販売計画は900万台だったが、テイラー効果もあって1000万台超えにつながる3回目のブームが到来した。「本当にチェキが好きなテイラーを起用したことで、宣伝ではない自然なプロモーションになった」(高井氏)。

1000万台超えは積極的なプロモーションやテイラー効果だけではなく、コアターゲットの10代女性以外の人たちにも受け入れやすいデザインや機能性も寄与した。「大人のチェキ」として落ち着いたデザインにした「mini 90」や、プリント出力前に画像の確認や編集も可能にしたチェキなども投入している。

コンセプトは「簡単で、シンプルに」

高井氏は「チェキのコンセプトは『簡単で、シンプルに』。これを壊さずに、男性や高齢者などそれぞれの人たちの嗜好に合ったラインナップを増やしたことでユーザーの裾野が広がった」と1000万台超えのもう1つの背景を説明する。ミニオンやハローキティなどのキャラクターやテイラー・スウィフトとコラボしたチェキも出ている。

チェキ本体の価格8000円~3万円程度(記者撮影)

チェキ本体の価格は8000円~3万円程度。ラインナップが増え続けているので新機種を買い足す人も多い。またチェキ用の10枚入りフィルムを1000円前後で販売しており、安定した収益が見込める。チェキに使用されるインスタント用フィルムは直接写真になるため、フィルムに現像技術やプリント技術が詰め込まれた富士フイルム本来の技術の結晶。他社に容易に真似されない参入障壁が高い商品だ。

チェキは祖業のフィルム事業で生き残っている稼ぎ頭でもある。フィルムが必需ではなくなったデジタル時代で、一番の自慢技術をアピールし続けられる。富士フイルムの写真に対する思いがチェキには込められている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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