富士フイルム「チェキ」、年1000万台なぜ売れる デジタルにはない「アナログ感」が人気呼ぶ
実際、チェキの販売台数はiPhoneが発売された2007年を契機に増加傾向に転じており、スマホと競合することなく販売台数を伸ばしていったことがわかる。「スマホやSNSで写真をやり取りするのが当たり前の中で、フィルムとその質感が特別感を与えている」(高井氏)。
チェキは撮影後、すぐに写真が出てくるので、イベントなどでその瞬間の思いをメッセージとして書き込んで残せるコミュニケーションツールとしても使える。
チェキの販売台数の約9割は海外だ。主に欧米で売れているが、中国やインドなどの新興国でも販売台数は急激に増加している。富士フイルム社内では、日本で使われている「チェキ」という愛称ではなく、海外で商品名として使われているインスタント写真システム「instax(インスタックス)」の名前で呼ばれている。
韓国の恋愛ドラマを機に再びブレーク
そもそもチェキが登場した20年前はデジカメの本格普及前で、現像なしに撮影してすぐ写真ができるというインスタントカメラ自体に価値があった。需要も堅調で、2002年度は年間100万台の売り上げを達成。ところが、デジタルカメラやカメラ付携帯電話が普及すると需要が落ち込み、最初のブームは去った。2004年度~2006年度は年間10万台程度しか売れなくなっていた。
転機となったのは2007年。韓国の恋愛ドラマでチェキが使用され、現地で話題となったのだ。韓国にある販売会社には問い合わせが殺到し、思い出や記念作り、一瞬一瞬を楽しむコミュニケーションアイテムとしてアジアを中心にプロモーションを行い、2度目のブームを迎えた。2011年度に127万台にまで伸びた。
2012年には「世界一かわいいカメラ」として「mini 8」を発売。もともとコアターゲットとしていた10代の女性を意識した商品展開の強化に加えて、欧米でも積極的に販促活動を実施した。販路も従来のカメラ店や家電量販店以外に雑貨店などにも広げ、販売台数は急激に伸びている。
SNSとの親和性も強みとなっている。チェキを携行し、撮影している姿やチェキで撮った写真をスマホで撮影してSNSにアップすることが流行している。アメリカの女性歌手テイラー・スウィフトさんのようなインフルエンサーにもチェキの愛好者がいて、インスタグラムなどではチェキがたびたび登場。新たなチェキファンの獲得につながる好循環が生み出されている。
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