ある中国のMBAスクールが欧米の名門を超えた 世界ランキングで他を圧倒した大学院の名前

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化学メーカー世界大手BASFの日本法人やエーザイの中国法人で働いていた中西豪氏(35)は、中国で起業することを目指して2016年にシーブスに入学。中国EC最大手アリババや、フードデリバリー大手の美団(メイトゥアン)など、中国スタートアップの成長戦略を学んだ。

「中国人学生は英語力もプレゼンテーション能力も高く、とにかくアグレッシブだ。教授が学生に質問をすると、クラスの半数が挙手していた」という。中西氏はシーブスを卒業後、中国の新エネルギー産業に関する調査や日本企業の進出支援を行うベンチャーINTEGRAL(インテグラル)社を設立した。

「日本企業からの調査依頼を無料で引き受け、結果に興味を持ってもらったら顧問契約を結ぶというビジネスモデルは、中国企業のケーススタディを実践したものだ」と話す。美団のようにサービス開始当初はタダ同然の価格で消費者に体験させ、一気に顧客基盤を築く戦略は、中国企業の常套手段だ。

学費はアメリカMBAの約半分

シーブスの学生は約7割が中国人だが、欧米人も多い(写真:大関祐介氏提供)

シーブスのもう1つの特徴は、MBAの学生よりも企業幹部向けのEMBA(エグゼクティブMBA)の学生のほうが多いことだ。大手中国企業の幹部として働くEMBAの卒業生がMBA生のメンターとなって学習をサポートするほか、「自社への就職を斡旋するエコシステムができている」(MBA予備校のアゴス・ジャパンで出願コンサルタントを務める岡田千瑞子氏)。

欧米の大学院に比べて学費が安いことも、シーブスの競争力の源泉となっている。日本オフィスを運営するフォースバレー・コンシェルジュの樋口明子氏によると、「アメリカのMBAは約2000万円かかることが多いが、シーブスは約1000万円」だ。みずほ証券を退職し、私費でシーブスに通った大関祐介氏は「コストの低さも魅力だった」と語る。

だが、“安かろう悪かろう”ではなさそうだ。シーブスはロンドン・ビジネス・スクールの出身者など、世界中から著名な教授を多く引き抜いてきた。中西氏は「海外スクールでの実績を持つ教授を中心に、講義の質は高かった」と振り返る。ソニーの出井伸之・元会長兼グループCEOも、シーブスのエグゼクティブ・コーチを務めている。

“MBAを取るなら欧米よりも中国”という時代は訪れるのか。MBAでキャリアアップを目指すビジネスパーソンは、シーブスの動向を注視すべきだ。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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