服が語る「フリーダ・カーロ」凄まじい生き様 ブルックリン美術館の展示で見た光と影
彼女がかつて世間の注目を浴びずにいたことは想像するのも難しい。1938年にニューヨークで初めて個展を開いたとき、『ヴォーグ』誌は彼女を「ディエゴ・リベラ夫人」と呼んだ。
フリーダ・カーロほど著名なアーティストは今日いないかもしれない。1本につながった眉毛と大きな茶色の瞳、うっすらと生えた口ひげにすぼめた口が特徴的な彼女は、出身国メキシコからアフリカまで世界中にその名が知られている。芸術界史上、カーロほど称賛を集めた女性は間違いなくいない。
自宅にあったもので人生を振り返る
カーロをモデルにしたバービー人形もあれば、スナップチャットのフィルターもある。EstyやeBayのサイトでは彼女をモチーフにしたグッズが何万点も販売されている。
ビヨンセが数年前にカーロの仮装をしたときは、メディアが「完璧」「悩殺」といったおなじみの見出しで報じた。カーロの生誕110年の際には、同じように仮装した1000人以上のファンがダラス美術館に集合。通常は共産主義を称賛することのないイギリスのテリーザ・メイ首相も、重要な演説の場でカーロが描かれたチャームのついたブレスレットを着用したことがある。
しかし、ニューヨークのブルックリン美術館で開催中の「Frida Kahlo: Appearances Can Be Deceiving(フリーダ・カーロ:見かけはあてにならない)」(5月12日まで)を私が不安を抱えながら訪れたのは、こうした「フリーダ・マニア」だけが原因ではない。
展示の中心はカーロの作品ではなく、彼女の服、ジュエリー、自宅にあった身の回りの品などを通じて彼女の人生を振り返っている。
この展覧会が最初に開催されたのが、最近ではセレブリティーのカルチャーをテーマにした軽いエキシビションが目立つロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)だった。