サマンサタバサ、創業社長が「突如交代」の理由 5月には保有株の半分をコナカ社長に売却へ

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アパレル大手の幹部は「今の若い世代には、CMにトップモデルを起用しても『自分には縁がない』と感じられて宣伝効果が薄い」と語る。インスタグラムなどで個人がコーディネートを発信する機会も増え、従来のような著名人を起用した仕掛けでファンを増やすサマンサの手法には限界もある。こうした時代の変化への対応については、課題として残されたままだ。

「さらなる改革を新体制に託した」と言えば聞こえはよいが、業界関係者の間では「このタイミングでの退任だと、まるで経営を投げ出したかのようにも映る」との声もある。

寺田氏とコナカ社長が筆頭株主に

さらに不可思議なのが、社長交代と同時に発表された寺田氏が保有する株式の売却だ。寺田氏は現在、サマンサタバサの6割超の株式を持つ筆頭株主だが、その半分を紳士服大手のコナカの湖中謙介社長に5月中旬に売却する。「湖中さんとは10年来の付き合い。サマンサが世界ブランドを作ることに尊敬・共感し、今回、資本参加をしていただいた」(寺田氏)。

売却後は、寺田氏と湖中氏の両者がそれぞれ約3割の株を持つ筆頭株主となる。株の売却はあくまで「法人としてではなく、代表が個人で購入した」(コナカ担当者)ため、会社間での資本提携などは現時点で決まっていない。

サマンサタバサジャパンリミテッドを創業した寺田和正氏(写真は2006年に撮影、撮影:尾形文繁)

だが、5月の株主総会後に、湖中氏はサマンサタバサの社外取締役となる。「大きな会社(=コナカ)のトップとしてマネジメントに長けている湖中氏からさまざまなアドバイスをいただきたいと判断した」と、サマンサタバサの菅原隆司常務取締役は語る。

業績不振が続くサマンサは、この3年間で自己資本比率が37.7%(2015年度)から21.3%(2018年度)に下がるなど財務状況が悪化。業界内では、会社そのものが売却される可能性すら噂されていた。そのさなかの創業者の保有株式の売却に、「この先、コナカと何らかの提携があるのでは」(複数の業界関係者)との観測もくすぶる。

新社長となる藤田氏は「日本発の世界ブランドという目標を持ち、平成のサマンサから令和のサマンサに向かえるように頑張りたい」と述べ、経営基盤の強化や海外事業の加速化を進める意向を強調した。新体制は今後どのような形で立て直しを図るのか、注視が必要であろう。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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