サマンサタバサ、創業社長が「突如交代」の理由 5月には保有株の半分をコナカ社長に売却へ

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売り上げが減る中で広告宣伝費や人件費などのコストが収益を圧迫し、2017年度は上場以来初の営業赤字に転落した。そこで同社は大規模な組織改革を断行。カンパニー制を導入し、ブランドごとに生産管理やPR(広告宣伝)を担う人員を配置する体制に変更した。

さらにCMからWeb広告への転換や人員削減、業務の内製化など複数の合理化策を徹底し、2018年度は営業黒字に転換。ただ、繰延税金資産の取り崩しにより最終損益は3期連続の赤字となった。

寺田氏によれば、カンパニー制への移行により各ブランドが現場起点で業務に取り組む体制が構築できたものの、創業者に依存した社風が改革の足かせになっていたという。業務改革を一段と進めるため、昨年には外資系金融機関などでの職務経験を持つ渡邊貴美氏とアドバイザリー契約を結んだが、「僕がオペレーションもマネジメントもやるのが組織に染み渡り、スタッフがなかなか(渡邊氏の)言うことを聞いてくれないなどの問題があった」(寺田氏)。

退任のタイミングに疑問

サマンサの最大の特徴とも言える海外セレブらを起用したプロモーション施策の多くは、経済界から芸能界まで幅広い人脈を持つ寺田氏の手腕で成り立ってきた。今後は藤田新社長やCOOに就く渡邊氏らが経営の指揮を執り、改革を進める。

もっとも、寺田氏退任のタイミングには疑問が残る。コスト削減で営業赤字を脱したとはいえ、抜本的な業績回復に向けた道筋はまだ見えてこない。ここ最近、同社の主要顧客層である若年女性の間ではカジュアル色の強いスタイルが浸透。サマンサが得意とする高単価でかっちりとしたハンドバッグは以前と比べ需要が薄れ、スポーティーなリュックサックやショルダーバッグが好まれる傾向にある。

粗利益率が7割近くと高い一方で、ブランドイメージを浸透させるためのプロモーションに金をかけるビジネスモデルに首をかしげる向きも多い。

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