娘も専業主婦に、と願う「問題母」の手なづけ方 結婚は「正社員と」「家を買え」は時代錯誤

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一方で、奥様の年金は70歳まで繰り下げることにしました。これで年90万円ほどだった年金額は約130万円に増えます。奥様は65歳になると、加給年金の対象だったため振替加算が支給されるのですが、1960(昭和35)年生まれの奥様の振替加算は月1739円です。それよりも月0.7%ずつ年金額が増える繰り下げのほうが得策と判断しました。

ご主人が69歳から74歳まで、奥様が65歳から70歳になるまでの5年間は、加給年金もつかず奥様の年金も受け取らないので、ご主人の老齢年金の約210万円が唯一の収入となります。この収入では年間150万円ほど生活資金が不足するため、蓄えを取り崩す計画を立てました。それでも退職金1000万円は将来の介護などに備え、手をつけずにおけるという青写真が描けました。

万が一、ご主人が亡くなったら奥様は遺族厚生年金を受給できます。ご主人の老齢厚生年金は約130万円ですからこの75%、つまり97万5000円です。ご主人の遺族厚生年金を受給すると、奥様は老齢厚生年金の約15万円を受給できなくなりますが、老齢基礎年金約75万円があり、遺族厚生年金との合計で172万5000円です。

奥様が70歳以降になってから、ご主人が亡くなった場合は、繰り下げによって老齢基礎年金が106万5000円に増えますから、遺族厚生年金と合わせれば204万円程度となります。

「年金って、思っていた以上にありがたい制度ですね」と、2人は感心していました。奥様は、遺族厚生年金や加給年金が「会社員」独自の制度であることを知り、ご主人に感謝の言葉をかけていました。

「会社員ではない彼」と結婚する娘は不幸者?

ご夫婦のライフプラン相談が長くなりましたが、「会社員の夫でよかったわ」と奥様が痛感された後、話は急展開したのです。

「もうすぐ働いている娘が結婚するんですけど、相手の彼がよくわからない仕事をしていて……。私は主人が会社員として勤め上げてくれたおかげでこうやって暮らしていけますが、娘の行く末が心配です」

奥様は、娘の結婚に断固反対です。

婚約者は会社員ではなくフリーで雑誌編集をしたり、翻訳をしたりしているとのこと。苦学生だった彼は、奨学金の返済もあるといいます。奥様にすれば、毎月の定収入がない人と一緒になったりしたら、「生活が不安定」で「娘が不幸」という方程式になってしまうのです。

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