娘も専業主婦に、と願う「問題母」の手なづけ方 結婚は「正社員と」「家を買え」は時代錯誤

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一方で、娘さんは会社員です。仕事が好きで、ずっと働き続けたいとのこと。しかし、専業主婦だった奥様は「結婚して子どもを産み、家庭を守るのが女の幸せ」という価値観なのです。「結婚してからも娘が仕事をさせられるなんて、ふびんです」と。

奥様の横で、ご主人は「おまえが心配しなくても、娘たちの人生なんだから何とかするだろう」と、ほほ笑んでいます。とても幸せな人生を送ってこられた2人なんだなと思いながら、筆者はこうお伝えしました。

「お嬢さんがこれから家庭を築いていかれる時代と、奥様がお子さんを育ててこられた時代は異なるので、お嬢さんの生活設計はこれからに合った考え方が必要です。働き方も、夫婦の形も多様になっています。見守ってあげれば、それでいいと思います」

2カ月後、今度はお嬢さんが婚約者と相談に来られました。しっかり将来について考えている2人でした。筆者の経験則では、同じ世帯年収800万円でも、夫婦どちらか一方が働きその年収が800万円以上ある場合と、夫婦共働きで800万円以上ある家計では、後者のほうが健全な場合が多いですね。若い2人もそうなるだろうと直感しました。

「家を建てなきゃ一人前じゃない」と迫る両親

もう1つのケースは、結婚したばかりの若い夫婦からの相談です。内容は、やはり親が価値観を押し付けるので困っているというのです。

奥さんの両親が「家を買わなければ一人前じゃない」としつこい。しかし、若い2人は「本当に買っても大丈夫でしょうか」と不安です。休日には母親に内覧会に連れ出されたりして、ご主人のほうは義母に押されて縮こまっている様子です。父親からは「低金利の今こそ住宅ローンに絶好のタイミングだぞ、消費税が上がる前に買え」とけしかけられて、反論しようがありません。

筆者は、若い2人に将来に向けてライフデザインを描くことを提案しました。ライフデザインというのは、細かな予算にとらわれずに、もっと大きな視野でこれからの人生を時系列で考える方法です。

子どもはどうか、どういう教育をしたいのか、仕事はどうするのか、それぞれのキャリアをどう考えるのか、年齢を重ねるにしたがって家族はどうありたいのか、などなどです。まず2人の「想い」を描いたうえで、少しずつ「お金」に落とし込んでいくとライフプランができあがってきます。

1カ月後、「一緒に考えました」というライフデザイン表を持って再度相談に来られた2人は、「これからの人生は私たちがつくるものだと改めてよくわかりました。家を買うのも、親の勧めだからという理由ではなく、自分たちが決断したタイミングで買いたい」と。家族の姿も確立できていないうちから、住宅ローンという大きな負債を抱えるのではなく、まずは将来に向けて資産形成を始めるそうです。

お金は、ありたい人生の「想い」のために使うことが最も大切ではないかと考えます。またその想いは誰かの押し付けや誰かの価値観のコピーであってはいけません。若い人たちの環境は、親世代の若い頃とは様変わりしています。親世代は、まずは若い人たちの考えを尊重し、見守っていく姿勢がよいのではないでしょうか。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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