ラウンドワン「ボウリング復活」へ放つ一手 映像・音声で初対面の客同士つなぎ、遠隔対戦

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その点、現代のレジャー業界は、家庭用ゲーム機から動画配信サービスまで、多様な娯楽・サービスと消費者の時間を取り合っている。ゲームセンターは景品を、カラオケは新曲を追加・更新する中、レジャー感覚の層を狙ったラウンドワンのボウリングのみ変化しなくていい理屈はなかった。「新規機種が出たら導入したかった。それを信じて待ったが、10年経っても、15年経っても出てこなかった」(杉野社長)。

液晶モニターの価格低下やインターネット回線の速度が向上したこともあり、ラウンドワンは3年ほど前から自社で新システムの開発に取りかかった。その結果生まれた「ラウンドワン ライブ」は、悲願の国内テコ入れ策なのだ。

ロシアや中国、東南アジアへの出店準備も

ラウンドワンは2010年代に国内店舗数が頭打ちとなり、成長の軸足をボウリングの本場・アメリカへの新規出店に移していた。アメリカの店舗は飲食サービスを安価に提供してアミューズメントに客を誘導するモデルで攻勢をかけ、すでに約30店舗を展開する。また、ロシアや中国、東南アジアなどへの出店準備を開始する。

ただ、「決して国内ボウリング事業の成長を諦めてはいない」(杉野社長)ようで、既存店の底上げを目指す。実際、遠隔プレイのシステムだけでなく、各レーンのモニターやベンチもリニューアルする気合いの入れようだ。

達成時期こそ明言しなかったが、杉野社長は国内ボウリング事業を「現状の売り上げ(約227億円)から20%は伸ばしたい」という。そのためにはラウンドワン ライブの有望なユースケースを探り、ニーズに合わせた頻繁なシステム更新が必要になるだろう。テコ入れを怠った過去の反省を生かし、同社の新たな設備は若者のハートにハイスコアを叩き出せるか。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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