シベリア鉄道vs一帯一路、日本企業が選ぶのは? ユーラシア大陸を横断、2つの貨物輸送ルート

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シベリア鉄道と中欧班列はどちらが便利なのだろうか。この点についての正解はない。どちらのルートもブロックトレインを仕立てることができるかどうかによって、所要日数は変わってくる。日系の物流業者がブロックトレインを毎週走らせ、さらに帰りの列車も荷物で満載という状況になれば、現在よりもコストは大きく下がる。つまりどれだけ多くの荷物を集められるかが決め手となる。

中欧班列の利便性を高めるために中国政府は巨額の投資を行ってきた。運行本数の増大に伴い、ターミナルの拡充や新ルートの構築なども行われている。他方、シベリア鉄道には北朝鮮を経由して韓国と結ぶ計画だけでなく、海底トンネルを造ってサハリン経由で日本の鉄道と結ぶという構想もある。

だが、輸送量が多くニーズが確実に存在するシベリア鉄道と韓国の直通に比べ、そもそも輸送量が少ない日本と鉄路で結ぶ計画に現実味は乏しい。インフラ整備費用を誰が負担するのかも気になる。

現状は鉄道貨物自体が少ない

日本の企業は、シベリア鉄道と中欧班列というユーラシア大陸を横断する2つのルートを今後どんどん活用するようになるのだろうか。海上輸送よりも短期間で、航空輸送よりも安いというメリットが認知されれば利用が増えていくように思われるが、そう簡単ではないらしい。

ある物流関係者は「アジア―欧州間における貨物輸送量の9割以上が船便。急ぎのときだけ空路を使う」と話す。この物流構造に陸路が入り込む余地は少ない。海上輸送では間に合わないが、航空便を使うほどの緊急性はないときに「鉄道輸送はどうでしょうか」と提案することから、営業活動が始まるという。

また、賞味期限が決まっている食品を輸出する場合なら、鉄道輸送で輸送日数が海上輸送よりも短くなる分だけ、販売期間を伸ばすことができる。この販売機会の長期化が輸送コストの増分に見合うものであれば、鉄道を使うという選択肢が出てくる。営業の現場ではこうした提案活動も行われている。

ユーラシア間の鉄道貨物輸送を増やすための地道な努力が続いている。日本とロシアを鉄道で結ぶという夢のような話は、鉄道が第3の貨物輸送手段としてしっかり根付くとういう前提あってのことである。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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