あのクラリオンがフランス企業に売られた理由 日立グループを離れたカーナビ企業の行く末

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近年、国内のカーエレメーカーが相次いで買収されている。

2017年には富士通子会社だった富士通テンをトヨタ系の自動車部品最大手・デンソーが買収。2018年12月にはアルパインが親会社のアルプス電気に完全子会社化されて上場廃止となった。オーディオやレーザーディスク、プラズマテレビで一時代を築いた名門・パイオニアも昨年、香港系ファンドに総額1020億円で買収され、今年3月27日に上場廃止となった。背景にあるのは、主力のカーナビ事業に吹き荒れる逆風だ。

一般的にナビを含むカーエレ事業は、市販用と自動車メーカー向け(純正用)の2つのビジネスに分けられる。市販用は純正用に比べると粗利率が高い反面、販促費がかさむ傾向がある。その市販用がナビの標準搭載比率の上昇を受けて競争は熾烈で、市場の単価下落が止まらない。スマートフォンのナビ機能の進化も続いており、この先の成長も見いだせない。

純正用は、自動車メーカーに採用されれば比較的安定するものの薄利の商売だ。にもかかわらず、日進月歩で進化するスマホ対応などで開発費は高騰している。ナビ事業の収益性が厳しくなる一方だ。

シート大手が欲しがったクラリオンの技術

他方、CASE対応を進めるうえで、カーエレメーカーが持つセンサーやソフトウェアの技術に価値を見いだす、フォルシアのような企業もある。クラリオンは日立グループの車載事業の中で自動車庫入れ機能や大型駐車場でのバレーパーキングなど低速領域での自動運転技術の開発を担当していた。コラーCEOは、「完全自動運転までの移行期には、クラリオンの低速での自動運転技術が重要となる。クラリオンと組まなければ、未来のインテリアビジネスをグローバルに展開する、というわれわれの大志を実現できない」と言い切る。

クラリオンは買収を機に業績を回復させることできるか(写真:尾形文繁)

この発言にはリップサービスがあるにしても、1400億円をつぎ込んだ買収にフォルシアが大きな期待をかけているのは間違いない。新たに設立したカーエレ部門を「フォルシア クラリオン エレクトロニクス」と名付け、拠点は日本、クラリオンの川端敦社長を部門責任者としていることにもそれは見て取れる。

フォルシアの顧客は欧州メーカーが中心で、日米メーカーが主要顧客のクラリオンとは取引先の補完関係も成り立つ。クラリオンとしても欧州メーカーへの販売が拡大すれば、稼働率低下に苦しんでいるハンガリー工場の立て直しにつながる。

日立からは切り離されたものの、積み上げてきた技術力が身を助けたと言える。今回、クラリオンにとっては初めての外資傘下入り。シート会社フォルシアの力を借り、巻き返すことができるか。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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