愛用の時刻表はどれ?「西村京太郎」創作の秘密 誰もが知りたかった疑問を鉄子が直撃
――確かに書いている途中で廃業や開業もありえますね。
いちばん失敗したのが東北新幹線ですよね。東海道新幹線の本が成功して、1年後に東北新幹線が走るということで、それに合わせて本を出したい、というんだよね。そしたら売れるだろうと。
列車はまだないけど、とりあえず駅だけはあったから、走っていることにして。おそらく車両は東海道新幹線と同じだろう、ということで同じ設備で書いたんですよ。東海道新幹線には車両の真ん中に非常口があったんだよね。椅子を回すと開くの。
犯人がその非常口から逃げる、というトリックだったんだよね。そしたらできるころに『東北新幹線にはそれがありません』とか言われちゃって、慌てたね。しょうがないから出口から逃げることにしたんですよ。
なんで非常口がないんですか?と聞いたら、東海道新幹線で1回も使われなかったんだって。だから東北新幹線から全部非常口がなくなっちゃったんだよね。
――そんなこともあるんですね。他にも困ったことはありますか?
乗らずに書いたのは東北新幹線だけで、他は全部乗って書いてるね。とりあえず十津川警部は東京の刑事だから、東京で事件が起きないとまずいんで、出だしはたいてい東京で。大体は連載で書いてるから、そこから犯人が遠くに逃げて、順番に追っかけながら取材をしていけばいいんだよね。
1回の取材で2つの本を書く
――先生の取材方法を教えてください。
取材は2泊3日が基本。それ以上かかったら、書く時間がなくなっちゃう。例えば取材に1週間かかったら、全部で6週間かかることになる。それだと今のペースで本は出せない。
さらに12回も取材に行ってられないから、1つの取材で2つ書いちゃう。こちらには車両の話、こちらには街の話、とかね。
写真は撮るけどメモはとらないんだよね。使いそうなところだけ覚える。逆に言えば、覚えているところだけ使う。
だいたい何時ころが最終列車だ、とかホームのキオスクが何時に閉まる、とか。最終列車の後にキオスクが閉まれば、目撃者がいるわけで。でもたまに間違えたりするんだよね。何時何分にキオスクが閉まった、と書いたら上りと下りでは時刻が違う、と言われちゃったりね。
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