「鉄道ミステリー本」の編集者はつらいよ 取材やトリック構築で大忙し、校閲も大活躍

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鉄道ミステリーが世に出るまでには編集者の果たす役割も大きい(編集部撮影)
推理小説には「鉄道ミステリー」というジャンルがある。一般的には西村京太郎の「十津川警部シリーズ」が有名だが、そのほかにも多くの作家が鉄道ミステリーの分野で活躍していることをご存じだろうか。
10月に講談社ノベルスから、鉄道ミステリーが4冊同時に発売された。『十津川警部 山手線の恋人』(西村京太郎)、『鉄道探偵団 まぼろしの踊り子号』(倉阪鬼一郎)、『鉄路の牢獄 警視庁鉄道捜査班』(豊田巧)、『東海道新幹線殺人事件』(葵瞬一郎)というラインナップだ。なぜ4冊同時発売なのか。作品ができるまでにどんな苦労があるのか。編集を担当した講談社文芸第三出版部の都丸尚史氏と岡本淳史氏に話を聞いた。

 

――鉄道ミステリーの編集で大変なことは?

都丸:トリックの正確性について、ファンから“ツッコミ”が入るので、気を遣います。昔、ある作品で陸橋から死体を走ってくる列車の上に落として、その列車が死体を屋根に乗せたまま走って、カーブで傾斜したときに死体が落ちたというトリックがありました。でも「その路線は電化されていて架線が張ってあるから死体を落とせないのでは?」というツッコミが入りました。私たちも気をつけています。

岡本:とはいえリアルさを追求しすぎると、何もできなくなるかもしれません。ファンに違和感をもたれない、ほどよい頃合いを見つけることが重要です。

校閲部も大活躍

――最近、出版社の校閲部がTVドラマ化されて脚光を浴びています。鉄道ミステリーにおける校閲部の役割は?

岡本:すごく重要です。たとえば今回も作中に出てくる時刻を校閲担当者が時刻表などですべて確認しました。それこそ時刻表に載っていない到着時刻まで。校閲担当者から「この列車は、平日は走っていない」という指摘があり、作家と「土曜日にすれば成立する」「でもそうすると、ほかの辻褄が合わなくなる」といったやりとりをずいぶんしました。また車輪の数について手描き図とともに疑問が寄せられたこともありました。こちらが見落としていた点も多く、かなり助けられました。

――校閲の結果、ストーリーが変わってしまうことは?

岡本:さすがにそこまではありません。ストーリーの骨格に沿うように直されていくことがほとんどでしょうか。

――TVドラマでは、校閲担当者は疑問点があると、現場に行って取材しますが。

都丸:校閲担当者が現場に行くことはほとんどありません。あくまで机の上で調べて解決するのが仕事です。

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