QBハウス快走を支える「超ハードな研修」の中身 たった10分でカットできるのはワケがあった

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「もう一度、はさみを握りたい」。研修生の吉田健太郎さん(29)は4年前まで別の美容室で6年間勤務していたが、シャンプーなど連日の水仕事による深刻な手荒れに苦しみ転職。専門商社の営業マンとして働くものの、カットが好きという思いを忘れられず、ロジスカットの門をたたいた。「経験者とはいえブランクがある。いきなり現場に出る自信はなかった」という。研修生の半数ほどがスタイリスト経験者だが、未経験者と同じ研修を受ける。

齊藤謙介さん(22)は美容室でアシスタントとして働いていたが、やはり水仕事による手荒れに悩まされた。そこでシャンプーの仕事がないQBハウスを選択。「美容室での研修は営業時間外の朝か夜のみだが、QBなら1日8時間みっちりできる」(齊藤さん)。

美容師の育成のためQBハウスも躍起だ(記者撮影)

一般的な美容室の場合、スタイリストとしてデビューするまでには2年間以上。一方のロジスカットでは、すきばさみを使ったセニングからバリカンワーク、ソフトモヒカンといった基礎から応用までを、4分の1の6カ月間、約1152時間で学びあげる。その分、日々の研修はハードだ。研修2カ月目の吉田さんは、「とくにショートカットの場合は、少し切っただけで大きく印象が変わるため難易度が高い」と吐露する。

毎年100人ほどの研修生がロジスカットを卒業し店頭に立つ。途中で挫折するケースもあるとはいえ、入校者の90%以上が卒業しているという。

値上げを原資に研修をテコ入れ

キュービーネットは、今回のカット値上げによる増収分を原資に、この独自の研修事業に磨きをかける方針だ。ロジスカットを卒業して店舗で働くスタイリスト向けに、“学び直し”の機会を今年から増やした。「技術水準はまだ上げられる」(江藤氏)。

松本修・取締役管理本部長によると、「時期は未定だが、仙台や北海道で新校舎を検討中」だという。値上げ後の2カ月を何とか乗り切ったキュービーネット。理美容業界の革命児は顧客の心を今後もつかみ続けられるか。ロジスカットの規模を拡大しながら、継続的に人材の質を高めることが求められる。
 

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(編集者・記者、マーケティング担当)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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