中国発"黒船LCC"は国内線をこう攻める 「春秋航空日本」は地方からの風に乗れるか

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大株主に有名企業の名はなし

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機内の様子は極めてシンプル(撮影:チャーリィ古庄)

9月の記者会見では、日本側の出資企業としてIT企業、商社、旅行会社、ファンドなどが候補に挙がっていると公言していた。ただ、今回発表された出資企業は、ベンチャーキャピタル(VC)や中小企業が名を連ねた。

春秋航空の33%に次ぐ出資比率となったのが、VCのスカイスターファイナンシャルマネジメント(31%)、岡山に本社を置く山佐(25%)である。スカイスターは、茨城県などが組成した「いばらきベンチャー企業育成ファンド」の業務執行を受託している。また、山佐はスロットマシンなど遊技機器のメーカーで、航空業界とは直接的な関わりがない企業だ。

日本側の出資企業の顔ぶれによっては、春秋航空日本のイメージを大きく変えることも予想されたが、今回の出資企業にいい意味でのサプライズはなかった。9月の記者発表時と比べると、トーンダウンした感が否めない。大手旅行会社などが名を連ねれば知名度アップも期待できたが、その機会を逃したことで「中国企業の日本参入」という色彩がより濃くなった。

尖閣問題が尾を引く中、奇しくも記者発表会と同じ日に安倍晋三首相が靖国神社を参拝した。春秋航空日本の鵜飼博社長は「中長期的な視点で(ビジネスを)考えている」と、需要開拓に強気の姿勢を崩さないが、日中関係が悪化すれば、当然ながら中国からの訪日旅行客の減少、また日本人の中国企業忌避というリスクは高まる。特にメインターゲットが個人旅行客であるため、その影響はほかの航空会社より大きくなる可能性がある。

国際情勢に左右されにくい利用者の定着に向け、まずは国際線の就航実績がある高松や佐賀で、できる限り日本人乗客を増やすことが最優先課題だろう。そのためにも、利用者にとって魅力的な運賃を提示することができるか。王煒会長は「お客様の利便性を図れる運賃設定を考えていく」と語る。

自治体のサポートを背景に、どの程度の運賃水準になるのか。そこに春秋航空日本の地方路線戦略の成否を分けるポイントがありそうだ。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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