ドンキが「非常識」を貫いても成長できる理由

タイの新店は連日行列、海外に触手を伸ばす

小売業の「王道」だったビジネスモデルが限界を見せつつある一方、ドンキは快進撃を続ける。第1号店が開業した1989年以来、29期連続で増収増益を達成。時価総額も大きくなり、小売業で国内6位に浮上した。

今年1月には、ユニー・ファミリーマートホールディングスから東海地方の名門GMSであるユニーの株式を追加取得し、完全子会社化した。

「大手チェーンストアのまねだけは絶対にしない」。これまでドンキの創業者・安田隆夫氏は、大手チェーンストアに対抗意識を燃やし、常識破りの経営手法を随処に取り入れてきた。

真っ先に思い浮かぶのは、ジャングルのような非効率な売り場づくりだろう。メーカーから廃番品などを安く仕入れた“訳あり品”を店頭に並べ、掘り出し物や新しい発見がある「宝探し」感を演出。安さを強調した手書きの「POP洪水」で衝動買いも促す。天井に届きそうな位置まで商品を陳列する「圧縮陳列」も展開する。

売り場の担当者にすべてを任す「権限委譲」も、非常識経営の象徴だ。社員ごとに担当売り場を決め、仕入れから陳列、値付け、販売まで大部分を任せる。

「現場で考える力こそドンキの強み」

「現場で考える力こそドンキの強み」と、PPIHの小田切正一執行役員は強調する。店舗運営のほとんどを本部が主導するGMSやコンビニと異なり、ドンキは社員の判断で品ぞろえや価格を決めるため、商圏の需要に応じた柔軟なオペレーションが可能になる。

ただ、単に権限委譲するだけではない。売り場の実績が社員の報酬にダイレクトに反映する成果主義を採用。昇格や降格も頻繁に実施する。そのため「どのような売り場をつくれば商品が売れるようになるか」を社員ひとりひとりが必死で考えなければならない。

ドン・キホーテUNY可児店。ユニー再建に向けたドンキとの共同運営店だ(撮影:遠山 綾乃)

社員の採用方針も非常識だ。学歴や経歴にはこだわらない。「学歴がなくても、とにかく野心のある人を求めていた」(30代の元ドンキ社員)。出戻りも歓迎する。複数回退職した社員を、そのたびに受け入れた例もあるほど。ホストクラブや板前修業から転身した社員もいれば、「明らかな『元ヤンキー』も多かった」(40代の元社員)。

こういった型破り集団がハングリー精神をバネに猛烈に働き、活力を生み出してきた。ただ、世間のイメージは悪かった。深夜営業で「暴走族のたまり場」と化していた店舗もあった。1990年代末~2000年代初頭には、深夜営業に反対する住民運動が一部地域で発生したほどだ。

ところが、経営破綻した長崎屋を2007年に買収したことが転機となる。精肉や鮮魚の販売ノウハウを吸収し、雑貨や日用品に加えて生鮮食品も扱う「MEGAドン・キホーテ」の展開を始めた。すると、家族連れなどの顧客がしだいに増加。かつては男性客が6割を占めていたが、今は7割が女性客と男女比率が逆転している。

小売業界において、ドンキの存在感が増していることは確かだ。次代の流通王か。それとも永遠の異端児なのか。ドンキは今、その岐路に立っている。

『週刊東洋経済』3月30日号(3月25日発売)の特集は「ドンキの正体」です。
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