日本発の仮想通貨「カルダノエイダ」の光と影 開発資金調達のICOをめぐり、くすぶる批判

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情報商材屋の活用は偶然の結果だったのだろうか。なおホスキンソン氏がICO当時に知人とやりとりしたメールの中では、彼らの存在を「必要悪」と表現していた。

「(仮想通貨に対する)既存の信奉者から資金を調達しているだけだと、新しい理解者を生み出すことができず、プロジェクトは小さくまとまってしまう。新しい方々を巻き込んでいく必要があると感じていた」

ホスキンソン氏は取材でそう語った。一方、ビジネスサイドを担当しアテイン社の創業者である児玉氏はICO時の事情により詳しいはずだが、書面でのやりとりも含めて取材を拒否した。

「過去の話」として済ませてよいのか

ホスキンソン氏の設立したIOHK社には、ICOで得たうち約半分の資金が割り当てられているという。その資金を元に研究者やエンジニアを約100人雇用し、カルダノの開発を急いでいる。

アテイン社はICO後に解散。現在は児玉氏の立ち上げたブロックチェーン関連企業のエマーゴとアテイン元専務の設立したコンサルティング会社CTIAが、東京理科大や明治大、武蔵大で学生向けイベントを開催したり、上場企業のメタップスと提携したりしている。

一方の佐々木氏は新たなICO案件に関わることが活動のメインのようだ。経済産業省や外務省が後援したイベントでは、海外のブロックチェーン関連企業の誘致に尽力。日本の個人投資家らとそれらをつなげる役割を果たしている。

カルダノエイダを技術の面で評価する声は少なくない。しかしその活動をめぐる議論は、「過去の話」として済ませてよい性質のものだろうか。仮にマルチ商法に該当したとしても、そのこと自体が違法というわけではない。被害者の存在も現時点では確認できない。

ただ、投資トラブルを多く扱っている「あおい法律事務所」の荒井哲朗弁護士は「マルチ商法自体に問題点がある」と指摘する。代理店報酬などの形で利益を分配するマルチ商法は、実質的に投資を誘うものだと言える。にもかかわらず、マルチ商法は素人が素人を投資に勧誘することが前提の仕組みとなっている。そのため、「リスクなどをきちんと説明して勧誘することが初めから無視されている。健全な金融取引秩序とは相容れない」(荒井弁護士)

カルダノエイダをどのように評価するかという問題には、仮想通貨に直接かかわる当事者だけがこれまで向き合っていた。だが、その存在感が増す中で、われわれ社会の見識が問われている。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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