アメリカで大論争の「現代貨幣理論」とは何か

「オカシオコルテス」がMMTを激オシする理由

だが、現代貨幣理論は、無税国家が可能だと主張しているわけではない。

そもそも、現代貨幣理論の根幹にあるのは、通貨の価値は課税によって担保されているという議論だ。

また、もし一切の課税を廃止すると、需要過剰になって、インフレが昂進してしまうであろう。そこで、高インフレを抑制するために、課税が必要となる。

また、格差是正のための累進所得税、あるいは地球温暖化対策のための炭素税など、政策誘導のためにも課税は有効である。要するに、課税は、財源確保の手段ではなく、物価調整や資源再配分の手段なのである。

さらに言えば、現代貨幣理論は、物価調整の手段として、課税以外にも、「就労保障プログラム」あるいは「最後の雇い手」と呼ばれる政策を提案している。これは、簡単に言えば、「公的部門が社会的に許容可能な最低賃金で、希望する労働者を雇用し、働く場を与える」という政策である。

就労保障プログラムは、不況時においては、失業者に雇用機会を与え、賃金の下落を阻止し、完全雇用を達成することができる。逆に、好況時においては、民間企業は、就労保障プログラムから労働者を採用することで、インフレ圧力を緩和する。

こうして就労保障プログラムは、雇用のバッファーとして機能する。政府は、同プログラムに対する財政支出を好況時には減らし、不況時には増やすことで、景気変動を安定化させる。不況時には確かに財政赤字が拡大するが、低インフレ下では、財政赤字はもとより問題にはならない。

こうして、就労保障プログラムは、物価を安定させつつ、完全雇用を可能にするのである。

現代貨幣理論を理解していない批判

以上は、現代貨幣理論の一部にすぎない。

しかし、これを踏まえただけでも、主流派の経済学者たちや政策担当者たちの批判が、いかに的を外れたものであるかがわかるようになるだろう。

例えば、パウエルFRB議長は「自国通貨建てで借り入れができる国は財政赤字を心配しなくてよいという考え方は間違いだ」と断定し、黒田日銀総裁も「財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張」と述べた。サマーズも、財政赤字は一定限度を超えるとハイパーインフレを招くと批判する。

しかし、読者はもうおわかりだと思うが、これらはいずれも、まともな批判になっていない。

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