「運転中のスマホOK」でも喜べない車業界の難題 公道の自動運転に向け法整備が前進するが…
日本政府は、東京五輪の2020年をメドに高速道路でレベル3、限定エリア内での完全自動運転であるレベル4の実用化を目標に掲げている。遅れ気味だった法整備のメドが立った。IHSマークイットの松原正憲アナリストは、「今後は、検査の仕組みづくりなどの実務的な議論に入れる」と指摘する。
しかし、最低限の法整備ができたというだけで、自動運転をビジネスとして伸ばしていくにはハードルがある。
2年前、独アウディが旗艦モデル「A8」で高速道路でのレベル3の自動運転機能を実現したと発表し、世界初のレベル3の市販車として注目が集まった。しかし、“母国“ドイツも含めて、世界を見渡してもA8のレベル3機能は現状使えないままだ。
安全基準をめぐるドイツの思惑
足かせとなったのが国際的な安全基準だ。自動運転については、国連機関(WP29)でレベル3~4の安全基準を議論している最中。ドイツは国内の安全基準を国際標準と一致させるスタンスであるため、道交法がレベル3に対応しても、安全性を測れない以上レベル3の機能を使えない。
ドイツは2016年に「ペガサス」という国家プロジェクトを立ち上げ、ダイムラー、フォルクスワーゲン(VW)、BMWといった自動車メーカー、ボッシュ、コンチネンタルなどの大手サプライヤー、複数の工科大学などオールドイツ体制で、自動運転における安全性の評価基準づくりに取り組んできた。
ペガサスのメンバーで、VWで自動運転領域の研究責任者を担うトーマス・フォルム博士は「例えば、雨の日と晴れの日では路面の状況が異なるが、どういう状況でもブレーキをかけて止まれないといけない。動物が飛び出してきた場合など物理的に避けられないケースもある。ペガサスでは、必ず対処すべきケースを洗い出し、そのときに必要とされる安全基準はどの程度か、どうやって安全性を評価するかを議論している」と説明する。
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