金価格の下落が止まらない インフレ懸念後退、ヘッジ手段としての需要減
[東京 20日 ロイター] -金価格の下落が止まらない。売りが売りを呼ぶ展開になっているが、米量的緩和の縮小決定がさらに拍車を掛けた。インフレ懸念が後退し、ヘッジ手段としての金需要が減少しているという。
インフレ率2%をめどとした現在の米金融緩和政策は物価上昇にもろい側面を持つが、マーケットの懸念は低いようだ。ただ、原油上昇によるインフレリスクへの警戒感もある。
物価上昇にもろい米緩和フレーム
金価格は19日の米市場では、2010年8月以来3年4カ月ぶりに1200ドルの大台を割り込んで取引を終了した。2011年9月に1920ドルを付けて以降、下落傾向が続いているが、ここにきて心理的節目を割り込んできた。
足元の下落要因の1つは「インフレ懸念の後退」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)だ。これまでは米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融緩和策によって物価上昇が進むのではないかとの不安があり、安全資産としての需要もあったが、量的緩和の縮小(テーパリング)が決定されたことで、インフレ対策としての魅力が薄れているという。
この反応はFRBにとっても朗報だろう。18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で決めた100億ドルという少額の買い入れ縮小と、将来の政策指針を示すフォワード・ガイダンスの組み合わせは、市場に安心感を与えたが、「バブルを生みかねないほど市場にやさしい内容」(国内シンクタンク)であり、インフレ圧力につながりかねないとの懸念もあった。
FRBは、失業率が6.5%以下に低下しても、インフレ率が目標となる2%を恒常的に下回るようであれば、ゼロ金利を続けると表明。市場も緩和環境が長期化するとの安心感からリスクオンに動いているが、裏を返せば「失業率改善や物価上昇にもろいフレーム」(国内証券)ともいえる。
いざとなれば失業率目標は下げることができるが、物価目標を緩めてしまえば、インフレ高進というツケがまわってくる。インフレの芽が見えたときには、すぐに金融引き締め方向に動かないと危険だ。