JR四国特急、「振子式」脱却阻んだ過酷なカーブ 最近の主流「車体傾斜式」には限界があった

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2600系には容量1100ℓの電動空気圧縮機を搭載し、空気供給能力を高めた(筆者撮影)
空気タンクは屋根上に搭載。空調のカバーと連続したデザインを採用している(筆者撮影)

2600系による走行試験の結果、土讃線は曲線が多すぎて空気の消費量がさらに膨大で、空気容量の確保に課題が残ることが判明。この結果2000系の後継車は振子式とすると2017年9月25日に発表した。こうして登場したのが2700系というわけだ。

全国的に縮減傾向にある振子式が土讃線に関しては生き残ることとなったのは、土讃線の線路条件がそれだけ過酷だったということだろう。

なお、土讃線では課題を残した車体傾斜装置だが、高徳線では問題がないことも確認しており、2600系は同線の特急「うずしお」で使用されることとなった。ただし量産車は登場せず、先行車4両のみの存在となる模様だ。

JR四国特急車の今後はどうなる?

2700系に採用された制御付自然振子装置は2000系と同様のもので、動作ロジックも変わらない。ただし振子台車は2000系のコロ式からベアリングガイド式に変更している。もっともベアリングガイド式も既存の技術でJR四国も8000系電車の試作車で経験している。

2700系の振子台車。振子はりはベアリングガイド方式で支持。これは振子はりのガイドレールを台車枠のボールベアリングで支持するものだ。ガイドレールは蛇腹のカバーで覆われている。制御付自然振子装置なので、意図的に車体を傾けることは可能(筆者撮影)

動力システムについては2600系に搭載されたエンジンと液体変速機を用いている。エンジンの出力は450psで2000系よりも100ps以上高出力となった。また液体変速機は変速2段・直結4段として発進時の乗り心地を向上させた。

空調装置も2600系のものをベースとしており、居住性を向上させた。この点については2600系の技術を無駄にはしていない。

2700系は性能試験ののち、2019年秋頃からの営業運転を目指している。多くが既存の技術で信頼性も高いため、おそらく試験走行も順調に行われ、量産車の仕様を決定していくと思われる。

現在JR四国の特急形気動車は2600系、2700系のほかに2000系、N2000系、そして国鉄型のキハ185系が存在する。このうち本州と結ぶ重要な使命を持つ2000系の老朽化が進行しており、置き換えが急務となっている。

2600系は高徳線限定となったものの、N2000系を松山に転出させて予讃線「宇和海」の2000系を一部置き換えた。2700系は土讃線から投入を開始して2000系を直接置き換えると思われる。

その後は2000系を直接置き換えるのか、N2000系の玉突き転配を行うのか興味深い所。キハ185系の今後も気になるところであるし、しばらくは四国の特急網の展開を見守っていきたいところだ。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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