JR四国特急、「振子式」脱却阻んだ過酷なカーブ

最近の主流「車体傾斜式」には限界があった

しかし、振子式は台車の構造が複雑で、ランニングコストも増加する傾向にある。一方、別の方式である空気ばねストローク式車体傾斜装置の制御を緻密化することが可能となり、5度傾斜の振子式に対して2度傾斜の車体傾斜装置でも同等の走行性能と乗り心地を確保することが可能となった。なによりも車体傾斜装置は構造がシンプルなのでコスト的に有利である。

車体傾斜装置を搭載した特急形電車8600系。車体の傾斜角度は2度だが、傾斜角度5度の振子式と同等の曲線通過性能を持つ(筆者撮影)

そこでJR四国は2014年に車体傾斜装置を搭載した特急形電車8600系の先行車を導入した。なお、8600系導入の目的は電化区間を運用していた2000系「しおかぜ」「いしづち」の電車化である。

8600系の車体傾斜装置は曲線の手前で曲線外側の空気ばねに空気を供給して、車体を持ち上げて2度傾斜させる。直線区間に戻ると空気を大気放出して車体を水平に戻すというものだ。

なお、車体傾斜の制御は制御付自然振子装置と同じく、線路マップに基づいた曲線の予見を行う。

車体傾斜装置を使用する関係で通常の電車より空気の消費量が多くなることが想定されたため、8600系先行車では毎分1600ℓ能力のS-MH13-SC1600を制御車と付随車に1基ずつ搭載。1両当たりの空気供給能力として毎分800ℓ〜約1066ℓを確保した。

各車両に搭載された空気タンクの容量は330ℓを確保。また、台車枠内にも容量45ℓの台車補助空気室を設けた。

車体傾斜装置の課題は空気消費量

車体傾斜装置は空気ばねをストロークさせて動作する。そのため曲線区間では曲線外側の空気ばねに大量の空気を送り込んで車体を傾斜させる(筆者撮影)
車体傾斜装置を搭載した特急形気動車2600系の先行車は2017年に登場した(筆者撮影)

しかし、走行試験の結果、車体傾斜装置による空気の消費量が想定以上だったことが判明した。

そこで2015年10月に製造した量産車では空気タンクの容量を710ℓに大容量化して、貯蔵空気量を増やした。空気タンクの貯蔵量に余裕ができたため、台車補助空気室の容量を45ℓから35ℓに変更している。

JR四国は電車の8600系に続いて、2000系を本格的に置き換えるべく車体傾斜装置を搭載した気動車の2600系を開発し、2017年に先行車4両を導入した。車体傾斜装置のロジックは8600系と同様で、理屈の上では振子式の2000系と同等の性能を得られると目された。

しかし床下スペースに余裕がある電車の8600系に対して気動車の床下には走行用エンジンと液体変速機2組と燃料タンクが占領している。この限られた空間のなかで、2600系は毎分1100ℓ能力の電動空気圧縮機S-MH16-SC1100を搭載した。空気タンクを搭載する床下スペースは確保できないため屋根上に空気タンクを搭載し、圧縮空気の貯蓄量を確保している。

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