JR四国特急、「振子式」脱却阻んだ過酷なカーブ 最近の主流「車体傾斜式」には限界があった

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1月23日に多度津工場で報道公開された2700系。先行車として2両編成2本が川崎重工業で製造された(筆者撮影)

JR四国が新たに導入した特急形気動車2700系は、現在土讃線・予讃線・高徳線で活躍している2000系を置き換えるために開発された。

2000系には振子装置という機能が付いている。振子式とは、車体を傾けて乗客が感じる超過遠心力を低減させ、曲線通過速度を向上させるための方式の1つであり、2000系は制御付自然振子式を採用している。2700系も同様に制御付自然振子式を採用し、2000系と同等の曲線通過性能を持たせているのが特徴だ。

「遠心力」を使った自然振子式

2700系が置き換える対象となる2000系。制御付自然振子装置を搭載し、曲線区間で車体を最大5度傾斜させる
2000系の振子台車台車枠の上で2つの空気ばね(赤い円柱の下にある茶色の物体)の下にあるのが振子はり。なお制御付自然振子装置は振子シリンダによって強制的に振子はり=車体を傾けることができるためこのような芸当ができる(筆者撮影)

自然振子式の原理は、車体の重量物を床下に集めて低重心化を図ると同時に、曲線区間で発生する遠心力によって床下機器が曲線外側に移動する力を利用し、車体の振子中心上を曲線の内側に傾けるものだ。車体を傾ける動作に遠心力という自然現象を利用することから自然振子式と呼ばれている。

振子車は振子動作を行うために特殊な構造の振子台車を装着する。JRでは、台車枠上に車体を支持する円弧状の振子はりを搭載。床下機器の動きに合わせて振子はりが移動すると車体が反対方向に傾く仕組みだ。

振子はりをスムーズに動かすため、台車枠と振子はりの間には円筒形の振子コロ、もしくはベアリングガイドレールを設けている。

2000系の制御付自然振子装置は、自然振子の動作をスムーズにして乗り心地の向上を図るため、意図的に車体を傾ける制御機構を加えたもので、台車枠と振子はりの間に空気式の振子シリンダを取り付けている。

車両は走行する路線の線型を記録した線路マップデータを搭載しており、走行位置情報から曲線を予見。曲線進入前に振子シリンダを動作させ、予め車体を傾けておく。曲線通過時や通過後も振子シリンダで車体の姿勢を安定させて、乗り心地の向上を図った。

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