三・一運動100周年で吹き荒れる日韓「春の嵐」 韓国の建国論争が日韓関係に思わぬ飛び火
この論争は、教科書の記述にも影響を及ぼした。朴槿恵前大統領は国定教科書を作り、1948年8月15日についての記述を「大韓民国政府樹立」から「大韓民国樹立」へと変えた。ところが、文在寅大統領は就任後直ちにこの教科書を廃棄し、新たな基準を設けた。そこでは、1948年8月15日は「大韓民国政府樹立」であり、大韓民国の建国は1919年の上海臨時政府としている。
「大韓民国の建国」と「大韓民国の臨時政府樹立」、「大韓民国政府樹立」という言葉が複雑に入り組んだ論争となっている。
文在寅政権の先鋭化は止まらない。それまでの教科書には「大韓民国は自由民主主義をもとに発展した」という表現があったが、文在寅政権が作った試案は「国民の力で民主主義を成し遂げた」という表現に変わった。「自由民主主義」から「自由」が消えたのだ。その理由は「自由民主主義」は、共産主義や社会主義と異なる国家体制を強調するためのものだから受け入れられないというのだ。先進国では当たり前の「自由」という価値が、南北統一には否定的な意味を持つという解釈だ。保守派が使う言葉を隅々まで検証し、北朝鮮との対立色を徹底的に消そうとしている姿勢が鮮明に出ている。
100周年イベントで高まる反日感情
問題は韓国の建国論争が、単に韓国の国内問題だけでは済まず、日韓関係に直接影響を及ぼしていることだ。具体的に起きているのが元徴用工裁判の大法院判決だ。
韓国の憲法の前文には「悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓国民は3・1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し」と書かれている。つまり、韓国の憲法は臨時政府を建国とみなしていると読み取ることができる。大法院は、この前提に立って植民地支配を不法なものと認定している。従って植民地支配時代に日本政府が徴用工に関するいかなる法律を作ろうとも不法状態は変わらない。徴用そのものが不法となるのだ。また、不法な植民地支配を前提とした日韓基本条約や請求権協定も、元徴用工が求める賠償請求とは無関係であるという理屈が生まれる。その結果、元徴用工が求めた賠償請求が認められた。
つまり、大韓民国がいつ建国されたかという論争は、日韓間の歴史問題について韓国側が主張する法理論に大きな影響を持つのだ。この理屈は今後の徴用工判決にも適用されるであろうし、慰安婦問題をはじめ他の問題にも波及しかねない。
また、文在寅政権による三・一運動の政治的利用が、日韓関係の改善をますます難しくすることも間違いない。100周年の今年、一連のイベントで植民地支配時代の抗日運動が美化され、韓国内の反日感情が高まるだろう。その結果、韓国内での日韓関係を改善しようという動きは、すべて「親日」というレッテルを張られ、世論の非難の対象になりかねない。
日本政府は今のところ条約や協定にのっとって淡々と対応する方針で、必要以上に事を荒立てないようしている。日本政府になすすべがないのであるからやむを得ない対応だろう。同時に国民レベルも、韓国内の「反日」盛り上がりに対抗して、安易な「反韓」「嫌韓」の動きを起こさないことが重要だろう。
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