日本人が大好きな「安すぎる外食」が国を滅ぼす 「ビッグマック指数」に見る経営者の歪み

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その証拠に、いまだに「数字ではない、お金ではない」とばかりに、「いいものを、安く、たくさん」という旧態依然たる経営戦略を強行している経営者が少なくありません。

日本のビッグマックは、なぜ途上国より安いのか

典型的な例は、外食産業です。国際比較が容易なマクドナルドを見ていきましょう。

イギリスの著名な政治経済紙「The Economist」が計算している「ビッグマック指数」は、以前、東洋経済オンラインの記事(なぜ日本のビッグマックはタイより安いのか)でも紹介されたことがあります。これは各国のマクドナルドのビッグマックの価格を比較することによって、適正な為替レートを算出しようとしている指数です。

ビッグマックは大きさ、材料、調理法などが、原則世界中で統一されています。一方、価格は国によってまちまちです。つまり同一品質・同一規格のものが、国によって異なる価格で売られていることになるので、このビッグマックの価格を比較することで、適正な為替レートを算出できるのです(ビッグマック指数は購買力調整されていますので、物価の違いなどはすでに調整されています)。

先ほど言及した記事でも紹介されていたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、日本のビッグマックの価格はタイやギリシャよりも安く、スイスの半分ぐらいで、どの大手先進国よりも極端に安いのです。

香港と台湾も安いことが気になりますが、生産性とビッグマック指数の間には、0.638とかなり強い相関係数が確認できます。労働者の1時間当たりの生産性では、相関係数はさらに高くなります。これは大変興味深い事実です。

では、なぜ日本のビッグマックの価格はタイやギリシャなどよりも安いのでしょうか。

ご存じの通り、日本の不動産価格は決して安くありません。材料も決して安くはありません。電気代やガス代も高いです。

利益は全体の付加価値のごく一部にしかならないので、利益水準の違いでは、日本のビッグマックの価格が安い理由の説明はできません。

残るのは、付加価値の最大の構成要素である「人件費」です。

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