家賃60万円滞納した30代「大手建設社員」の転落 33歳男性の事例だが決してひとごとではない

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「もう、追い出してください!」

訴状が玲子さんの手元に届いた頃、玲子さんのご主人である宏さんから電話がありました。

「もう追い出してください。本人とは連絡もつかないし、私たちだってどうしようもないんだ」

宏さんは、とても攻撃的な物言いでした。家主がこれほどまでに滞納を放置しているから悪い、もっと早くに手続きしていれば連帯保証人の負担も軽くなるのに、と怒ってばかりです。おまけに義理の弟である和夫さんのことも、かなり厳しく批判を始めました。

和夫は、仕事で何か失敗したみたいです。急に「会社辞めるから金よこせ」って、義母のところに連絡してきて。30歳過ぎているのですよ。働いてきたのだからそれなりに貯金もあるだろうに、母親に金を出せってひどいでしょう?
だから僕が会いに行きました。まぁ、義理の関係ですけど、実の姉と話すよりは冷静に話し合えるかなと思ってね。でもまったくダメでしたよ。
とにかく自分が仕事を失ったのも、親が悪いなんて言いだしてね。この歳になって、自分の仕事の失敗と親は関係ないじゃないですか。だから僕も呆れてしまって、ちょっと怒鳴っちゃったんですよね、甘えるなって。
それがいけなかったのでしょうね。もう部屋の中で、暴れ出しちゃって。手がつけられませんでしたよ。自分の思いどおりにならないと、駄々をこねる小さな子みたいな、そんな感じですね。
義母も男の子だったから、玲子より甘やかしすぎたのかな。それにしても、もういい歳ですからね。親とか関係ないですよ。甘えているとしか思えませんね。
仕事辞めたのだって、自分の責任ですよ。こっちに言ってきても、それは違うでしょう? だからもう、手続きで追い出しちゃってください、平気ですよ。ただ玲子のほうは、このまま被告というのも困るんですよね。

宏さんは弁護士だった

宏さんの言葉の端々には、法律の専門用語が出てきました。手続きの流れも驚くほど把握されています。もしかして司法関係者かも……。

ピンときたわたしは、電話しながら検索してみると、同姓同名の弁護士が存在しました。

「じゃあ、先生は、どうお考えですか」

思い切ってカマをかけて聞いてみると、「訴外で和解をお願いしたい」と専門用語での返答がありました。やはり電話で話している相手は、先ほどパソコンで検索した弁護士その人なのでしょう。

電話をかけてきたときの攻撃的な喋り方は消え、落ち着きを取り戻したようでした。

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